14年目を迎えた東北メディカル・メガバンク機構、未来へとつながる1年に (2025年4月)

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2012年2月の東北メディカル・メガバンク機構の設立から13年が経ちました。今年度は、5年度おきに進めてきた段階の第3段階の最終年度です。この長いときを経て、ようやく当事業に対して然るべき評価がいただけるようになってきたと感じます。この計画を立案した当時は日本に本格的なバイオバンクはほとんどなく、何をしようとしているのかを理解していただくだけでも、本当に苦労しました。ところが、今では多くの方々が、バイオバンクの重要性を理解され、バイオバンクを使いたいという方はもちろん、TMMのようなバイオバンクを作りたい、どうしたらよいのか、という声も方々からいただけるようになりました。

大規模コホート調査を実施し、膨大な試料や情報を整理・保管し、さらにそれを多くの方々が使えるようにする、そういった目に見える活動があったことも大きいと思います。その一方で、単なる便利なツールにとどまらず、バイオバンクというものがなくてはならないもの、当たり前にあるものとして日本に根付きつつあるという手ごたえを感じます。バイオバンクはすべての人に寄り添う信念や価値観を伴った存在であり、ゆくゆくはひとつの文化として歴史に刻まれるような概念になると思います。ただ、現時点ではまだその兆しが見えたに過ぎず、これまで同様、道を新たに切り拓くという姿勢に変わりはありません。より高度で使いやすいバイオバンクを目指し、引き続き絶え間なく努力をしてまいります。

本年度は、2026年度から始まる次の段階に向けた重要な1年となります。これまでの成果を総括し、次の段階の重点をどこに置くのか、そこで何を成し遂げるのか、どのようにして実現するのか、をしっかり議論しなければなりません。具体的には、第4段階コホート調査の実施、医療情報収集の加速、幅広いコホート参加者を活かした性差と思春期に注目した研究、リコンタクトコホートの形成、プロテオームを含めた最先端オミックス解析の充実、などを検討しています。明確なビジョンに基づいたコホートを設計しつつ、なお一層利活用を推進し、「蓄積する」「使う」が相互に作用し合い、スムーズにサイクルが回るバイオバンクとなるよう、しっかり準備して、我が国の学術と産業の振興に資するバイオバンクに育てていきたいと思います。これらの実施にあたり、課題はたくさんありますが、新しいことに挑戦できることは大きな喜びです。挑戦し続けられること、新しい文化の創造に立ち会えることに感謝しています。

最後となりましたが、東日本大震災で亡くなられた方、被災された方に改めて追悼とお見舞いの言葉を述べたいと思います。このプロジェクトは東日本大震災の復興を目的にスタートしました。私たちの原点であるこの大震災を、これからも忘れることはありません。世界中でさまざまな災害が起こっています。2011年3月に私たちは当たり前の生活があっけなく失われてしまうことを、身をもって経験しました。私たちの働く東北メディカル・メガバンク棟では毎年3月11日午後2時46分に黙とうを捧げています。目を閉じるときさまざまな思いが胸をよぎり、つらい気持ちになることもありますが、あの日を振り返る大切な1分間です。これからも毎年追悼の時間を設けてまいります。

2025年4月1日
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
山本雅之