試料・情報の利活用促進

東北メディカル・メガバンク計画の大規模ゲノムコホート調査による試料・情報を多くの研究者の方々と共有し、研究を進められるように整備を行い、幅広い利活用を推進しています。利活用は、ToMMoとIMM以外の研究機関の方々が主体的に研究を進める「分譲」と、ToMMoとIMMの研究者が研究に関わる「共同研究」などの形態があります。貴重な試料・情報が使われるにあたっては、外部の有識者を中心とした試料・情報分譲審査委員会による審査を経ています。次世代医療を切り拓いていくために、多くの試料・情報が有効に利活用されるように、環境整備や利活用促進に努めています。

利活用とデータ共有に向けた環境整備

研究に必要な試料・情報を、研究者自らが探しやすく且つ使いやすくするために、データベース構築やアクセス環境整備を進めています。また、個人情報保護の徹底やビッグデータへの対応のために、データをコピーして共有するデータシェアリング型だけではなく、集めたデータに研究者が直接アクセスするデータビジティング型の共有という新しい試みも推進しています。
下に述べるような各種研究基盤や統合データベースの充実に伴い、分譲等の実績が増加し、その内容も個別の研究室単位の小規模なものから、複数の研究機関にまたがる大規模なものや民間企業による研究に至るまで多様化しており、それらのニーズも様々です。当計画で得られた試料・情報が我が国の共通資産として一層利活用され、より多くの科学的、社会的な成果を生み出す基盤となることを目指し、マンツーマンでの対応を含む利用者への分かりやすい情報提供・申請書支援や相談対応などのサポート体制を整えています。

データ共有体制の確立

当計画で集められた「情報」は、大きくオープン・スタンダード・ストロングにセキュリティレベル分けされ、オープンの分類である個人識別性のない統計解析情報などは、公開データベース日本人多層オミックス参照パネル(jMorp)にて公開されています。全ゲノム解析情報、オミックス解析情報、日本人基準ゲノム配列などが公開されています。2015年以来、日本のみならず全世界100カ国以上からの利用があります。
セキュリティ体制についてはこちらをご覧ください。

オープンの分類以外の試料・情報は研究者からの申請後、所定の登録・審査の上でMTAを締結し利用可能となります。大規模ゲノムコホート調査由来の健康調査情報及びゲノム・オミックス情報を格納したデータベースである統合データベースdbTMMを構築しており、分譲で利用できるすべてのデータが格納されたdbTMMを駆使して、研究の条件に合致する/仮説を検証する試料や情報があるかどうか検索できるような仕組みを整えました。また、基本情報、健康調査情報の項目、データ数等の統計量、分布等のグラフなどをまとめており(東北メディカル・メガバンク 統合データベースdbTMMカタログ)、利用申請をする前に検討できるようになっています。

 

さらに、遠隔地から統合データベースdbTMMなどの膨大なデータと計算資源に、高度なセキュリティを保ちつつアクセスできる遠隔セキュリティエリアを整備し、2016年12月から運用を開始しました。遠隔セキュリティエリアを設置いただくことで、他の研究機関からもVPN回線を通じてToMMoのスーパーコンピュータへアクセスが可能です。2021年現在、日本全国約30ヶ所に拠点が設置されており、遠隔地の研究者に向けたデータビジティングおよび、計算資源の提供が可能になっています。

主な遠隔セキュリティエリア設置地点(2021年現在)

また、東北メディカル・メガバンク機構日本橋分室(東京都中央区)に整備した日本橋共用端末室(訪問型の遠隔セキュリティエリア)は、これまで設置が難しかった研究者にコストを抑えてご利用いただいております。セキュリティを担保した環境で安全性と利便性を両立した先導的な情報分譲の環境構築を進めています。

また、ToMMoのGWASセンターが進める他の研究機関から検体・解析情報を受け入れて行うGWAS等の解析結果についても広く共有する仕組みを構築しています。

 

生体試料の利活用促進

長期健康調査で得られた生体試料についても、利活用促進しています。解析設備併設型の複合バイオバンクである本バイオバンクは、貴重な生体試料の枯渇を防ぐために解析済みの情報を一元化して保管するなど、より有効に活用できるよう努めています。2021年8月末までに約20件、外部の研究に生体試料(主にDNA、血清)の分譲を行い、その出庫本数は共同研究等も含め約36万本にも上っています。

日本国内の連携・利活用促進に向けた取組

本バイオバンクは国内有数の取組であり、バイオバンク事業の先駆者として、設立・運用のノウハウ、より良い試料の処理や解析手法の確立、保管や運用方法の標準化、倫理的・法的・社会的な課題など様々な面でリーダーシップを発揮し、日本全体のバイオバンク発展に貢献するよう努めています。ライフコース・複合バイオバンクを形成し、次世代医療を先導する上で多様な試料・情報を利用可能とするには、他事業との連携が不可欠です。

国内連携ネットワークの構築

当計画では、既存の日本の主要なバイオバンクやコホートと連携、ネットワークを形成し、さらに発展する取組を進めています。AMEDゲノム研究プラットフォーム利活用システムの研究開発事業を通じ、2019年10月に3大バイオバンクと4の診療機関併設型バイオバンクを横断的に利用可能なバイオバンク・ネットワークを構築しました(バイオバンク横断検索システム)。疾患名、既往歴、試料種類、解析情報種類などの標準化、ワンストップの利用窓口の構築により、運用面でも国内バイオバンクの利活用を促進しています。今後、診療機関併設型バイオバンクをさらに加えた拡充や、バイオバンク横断検索システムの検索機能の拡充を進めることで、統合された形式で情報が提供可能なバイオバンク・ネットワークへと深化させていきます。

バイオバンク横断検索システム概念図

また、国内6研究機関の各コホート研究で収集した36.6万人規模の情報を相互利用するための包括的な共同研究の枠組みを構築しました(国内ゲノムコホート連携)。今後は国内のコホート研究を横断的に検索できるネットワークや、それを統合したベータベースの構築にも取り組んでいきます。