東北大学東北メディカル・メガバンク機構の創立10年目に入るにあたって(2021年2月)

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東北メディカル・メガバンク計画は、平成23年度(2011年度)からスタートし、令和2年度(2020年度)に最終年度を迎えました。この間、大規模コホート調査と健常者のバイオバンクを構築し、また、生体試料を全ゲノム解析やオミックス解析などの情報に変換して分譲する試みを実施して、広くデータの公開を果たしてきました。
これまでの当機構の成果の背景には、2011年3月11日に発生した東日本大震災で被災された宮城県ならびに岩手県の住民の皆様の多大なるご協力とご支援があったことを私たちは忘れていません。私たちは、遺伝子・ゲノム情報に基づいた個別化医療や未来型医療の実現という、コホート調査に参加された皆様との約束を果たさなければなりません。

全ゲノム解析は本プロジェクトを開始した頃には難易度が高く、そして解析コストも高いものでした。しかし、この間には解析技術も進歩しています。当機構で開発したジャポニカアレイは、日本人の多因子疾患リスク要因解明において貢献度が高く、大規模なゲノム情報収集に優れた解析ツールです。
そして、今、私たちは政府からの支援を受け、日本製薬工業協会を中心とした産業界との連携のもと、総計10万人の全ゲノム解析を目指すプロジェクトに取り組んでいます。2013年のコホート調査リクルートを始めた頃には、総計1000人の全ゲノム解析に対しても、できるはずがないと言われていましたが、私たちはそれを1年も経たないうちに可能にしました。これからは当時の100倍を超えるペースで全ゲノム解析を行うことになります。機構の総意として一人ひとりが使命感を持って取り組んで行く所存です。

私たちは、本プロジェクトを通じて産学連携の重要性を学びました。東北大学は、市民・企業・自治体の後押しによって誕生し、現在に至るまで社会の支援をいただきながら歩んで参りました。そこには、社会の希望を紡ぐ「場」としての大学の姿が立ち現れています。つまり、大学は若い人たちへの「教育の場」であることはもちろんですが、地域社会に強く根付き、世界に向けての地域文化の「発射台・広告塔」の役割を担わなければなりません。私たちは、東北地方の歴史的な文化や新しく発見した知見を全世界に発信する役割を果たしていきたいと思います。

新型コロナウイルス感染症が蔓延する中ですが、私たちの健康調査は簡単に取りやめるわけにはいきません。昨年、緊急事態宣言発令により一時的に中断はしましたが、再開後は参加者の皆さんとともに最大限の感染予防策を励行することで、一人の感染者も出すことなく順調に健康調査が行われています。これまでの感染予防策に加えて更なる自己管理の徹底を行い、水際対策をしっかり励行していく所存です。投与開始が間近と言われているワクチンも加えて、この難局を乗り越えていく所存です。

最後に、昨年末にこの10年を総括する目的で学術研究論文成果集と論文リスト集を発刊しました。この間、機構オリジナルの論文を実に800本以上公刊しました。また、ToMMoから分譲した試料・情報を使った論文も400本を超えました。私たちのこれまでの活動が世界の研究者に貢献できていること、そして、未来型の社会実現に貢献していることに誇りを持ち、新たな5年、10年に向かって、志を高く持ち、事業を進めて参ります。

2021年2月1日
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
山本 雅之