復興・創生、そして未来型(個別化)ヘルスケア実現に向けて~東日本大震災から10年の節目に~(2021年3月)
2011年3月11日に発生した東日本大震災による未曾有の被害を受けて、普通の暮らしと営みが奪われた日から10年が経ちます。犠牲になられた多くの方々およびそのご家族に、改めてお悔やみを申し上げます。また、震災以降、引き続き困難な状況に置かれている方々に心からのお見舞いを申し上げます。
東北大学東北メディカル・メガバンク機構は大震災の被害が癒えない中で、何としても希望の光を見出そうと試行錯誤を重ねながら進んで参りました。その中で見えてきたのが、被災地における医療復興に貢献すること、そして、未来型医療の開発体制を構築し、それを被災した皆様に迅速にお届けすることでした。
本事業の開始に当たっては、まず、宮城県の妊婦さんとそのご家族を中心とした三世代コホートと、住民の皆さまを対象とした地域住民コホートのリクルートに取り組みました。皆様のご協力のお陰で、両コホートを合わせて、総計15万7千人の方々にご協力頂くことができました。
これらのコホート調査では、参加者の健康調査により重篤な疾患が発見されることなどがありました。急ぎの対応が必要な場合には緊急回付連絡を行い、医療機関への紹介を行ってきました。また、生体試料については、最新の解析を行い、健康情報に付帯して分譲する複合バイオバンクを構築してきました。参加者の健康情報や震災の中長期的影響については、統計値として地方自治体に情報提供し、住民の健康増進に向かう健康施策立案にも貢献しております。併せて、循環型医師支援制度を通して、地域医療機関への医師派遣を継続し、地域の健康復興に貢献してきました。
2021年度から当機構は、個別化ヘルスケアの実現に向けての基盤構築に機構一丸となって取組んでまいります。コホート追跡調査においては、新規手法を積極的に導入して効率的かつ効果的なライフコースデータの収集を試み、大規模災害後の中長期的な健康に対する影響の解明や高齢化社会の進展に伴う認知症等の健康課題の解決を目指します。また、出生前、人生の初期・中期・後期の各ライフステージにおける重点疾患に関する試料・情報の継続的な収集を行い、他のコホート・バイオバンクとも連携し、ライフコースにわたる大規模な試料・情報を利用する研究基盤の構築を目指します。さらに、個別化ヘルスケア実現のために多因子疾患のリスク予測情報の精度向上を確立することやジャポニカアレイを活用した未来型健診にも挑戦していきます。そして、全ゲノム解析の規模拡大は産官学連携で10万人規模の全ゲノム解析を達成し、日進月歩で開発が進む解析技術も取り入れながら複合バイオバンクとして、利用者のニーズに合った基盤解析を実施していきます。これらの計画を確実に遂行することで、日本のみならず世界の個別化ヘルスケアマネジメントに貢献していく所存です。
地域の皆様、ならびに、関係省庁、宮城県、市町村、保健医療機関、医師会、研究機関など関係各位のこれまで以上のご指導・ご鞭撻を心よりお願い申し上げます。
2021年3月11日
東北大学 東北メディカル・メガバンク機構
山本雅之
- 「東北大学東北メディカル・メガバンク機構の創立10年目に入るにあたって」(2021年2月)
- 「東日本大震災から9年のこの日に」(2020年3月)
- 東北メディカル・メガバンク機構 節目の年を迎えて(2020年2月)
- 「東日本大震災から8年を機に」(2019年3月)
- 「8年目を迎えた東北メディカル・メガバンク機構」(2019年2月)
- 「東日本大震災から七周年を迎えて」(2018年3月)
- 「東北メディカル・メガバンク機構の6周年を迎えるにあたって」(2018年2月)
- 「東日本大震災から6年を経た今日に」(2017年3月)
- 「東北メディカル・メガバンク機構5周年の節目に」(2017年2月)
- 「東日本大震災から5年目にあたって」(2016年3月)
- 「4周年を迎えた東北メディカル・メガバンク機構」(2016年2月)
- 「東日本大震災より4年が過ぎて」(2015年3月)
- 「東日本大震災から3年を迎えて」(2014年3月)
- 「東北メディカル・メガバンク機構設立から2周年を迎えて」(2014年2月)
- 「東日本大震災から2年を迎えて」(2013年3月)
- 「東北メディカル・メガバンク事業のスタートにあたって」(2012年10月)
- 「東北メディカル・メガバンク機構発足にあたって」(2012年2月)