次世代医療の基盤をつくる

東北メディカル・メガバンク計画が目指す個別化医療・個別化予防。これは個人の体質や病気の特徴に合わせて予防や治療を選択する次世代の医療の事を指しています。
こうした医療を行うためには「一人ひとりの詳細な情報」を知る必要があります。私たちは様々な種類、そして膨大な量の「一人ひとりの詳細な情報」を収集することにより、次世代医療を実現するための基盤を作っています。

ゲノム情報などを集約した研究基盤の構築

東北メディカル・メガバンク計画では、2013年から実施している長期健康調査参加者15万人の情報を収集したバイオバンク(TMMバイオバンク)を構築しています。バイオバンクには、血液や尿などの生体試料、そしてゲノムやオミックス(生体分子)の解析情報、調査票や検査の結果など様々な情報が含まれます。すべての試料・情報は、いわて東北メディカル・メガバンク機構とともに収集・解析を行っています。解析については網羅的な基盤となるよう両者で解析範囲を調整のうえ進めています。

生体試料を保存する凍結保存容器

ゲノム解析基盤

当計画では2019年12月現在5,000人分近い高精度全ゲノム解析を完了していますが、2020年には総計8,000人分を完了する予定です。8,000人分の全ゲノム解析データを得ることができれば、多くの人が生涯で罹患する疾患に関係するゲノム変異の大部分を包含することができると予測しています。
また、得られた数千人分の全ゲノム解析結果をもとに、日本人に特化したSNPアレイの開発を行い、ジャポニカアレイ®として上市しています。このアレイを用いた解析を10万人規模で行い、その結果に上記の数千人分の全ゲノム解析結果を組み合わせて遺伝子型インピュテーションを実施しています。遺伝子型インピュテーションとは、SNPアレイの解析結果から全ゲノム解析に近い精度の解析を実現するものです。SNPアレイ解析は全ゲノム解析より安価かつ高速でゲノム解析が可能なため、数万検体レベルの解析計画が可能となります。当計画では、最終的にはコホート調査参加者15万人全員のSNPアレイ解析を行うことを目指しています。

ジャポニカアレイ®

さらに「日本人基準ゲノム配列」を作成し公開しています。これをひな型とすれば、これまで解析できなかった民族特有のゲノム配列が明らかになります。このように、全ゲノム解析データとこれをもとに構築される様々なゲノム解析情報を研究基盤として構築しています。

 

オミックス解析基盤

メタボローム解析情報を中心としたオミックス解析情報は、ゲノムと疾患等の表現型をつなぐ中間の情報として近年注目されています。このため、ゲノムだけでは解明が難しい疾患の原因や治療法の発見、そして特にバイオマーカー発見のための重要なピースになると考えられています。ただし、オミックス解析情報は、生活環境や年齢、検体の採取状況や保存方法によって左右されるため、解析人数を増やしながら医療の基盤となり得るオミックス解析データがどうあるべきか、模索しつつ研究基盤の構築を進めています。2019年12月現在約3万人分のメタボローム解析を完了していますが、将来的には7万人分以上でより多くの代謝物を解析できることを目指しています。

 

複合バイオバンク

ゲノムやオミックス解析情報のほかに、コホート調査で得られた調査票情報、検査情報、そして世界で唯一の家系情報付きの出生コホート調査である三世代コホート調査の情報、等々、東北メディカル・メガバンク計画で得た試料・情報をすべて蓄積する複合バイオバンクを構築しています。

研究基盤の更なる発展

TMMバイオバンクは現在も継続して、コホート調査に参加された方々の情報を収集しており、時系列での健康情報、解析情報が得られつつあります。また産学連携等により、新たな調査項目も追加され、東北メディカル・メガバンク計画で得た試料・情報すべてを蓄積する複合バイオバンクを構築しています。

スーパーコンピュータ

これらの貴重な試料と情報の一部について、全国の研究者と情報をシェアリングする仕組みを整えています。今後、三世代コホート調査による血縁の連鎖や家族の生活習慣等の情報についても徐々にシェアリングの対象に含めていきます。シェアリングにあたり、参加者への同意取得方法とその管理、情報保護のための強固なセキュリティ管理、データ項目の標準化、膨大なデータから目的のものを検索するための様々な仕組み、値のばらつきを最小限にするデータの品質管理などたくさんの課題がありましたが、私たちはこれらをひとつひとつ克服してきました。
また、TMMバイオバンクの大規模ゲノム解析データを利用したゲノム解析のための共同研究の仕組みを構築しています(GWASセンター)。GWASセンターで得られた解析結果は基本的にTMMバイオバンクに還元し、更なる情報の充実を図ります。
ゲノム解析においては、解析が難しく未解明の点が多いゲノムの構造多型についても解析基盤になる研究に取り組んでいます。
それから、ゲノム医療の実現に伴い発生すると考えられるのが、倫理的・法的・社会的な課題です。これらの問題を先導して解決し、後に続く研究のモデルとなることも次世代医療の基盤のひとつと考えます。

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