お知らせ

記事一覧
全て
ニュース
成果
プレスリリース
イベント
2016.06.27

「震災後の心理的苦痛と高血圧治療中断」についての論文がDisaster Medicine and Public Health Preparedness誌 に掲載されました

東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の 中谷直樹准教授 は、同部門の 中村智洋助教 及び 土屋菜歩助教、成田暁助教、辻一郎部門長、寳澤篤教授、富田博秋教授 と共同で、七ヶ浜健康増進プロジェクト*1に関する論文、「東日本大震災1年後の沿岸部被災地における心理的苦痛と高血圧治療中断の関連」を発表しました。本研究は、宮城県七ヶ浜町に住む20歳以上の方1,014人を解析対象としています。
この成果はDisaster Medicine and Public Health Preparedness誌に2016年6月23日付でオンライン出版されました。

■研究内容
【目的】東日本大震災後、慢性疾患の治療を中断する患者の増加が懸念されています。そこで本研究では、沿岸部被災地における心理的苦痛と高血圧治療中断の関連を検討しました。

【方法】東北大学は七ヶ浜町との共同事業「七ヶ浜健康増進プロジェクト」で、町内(特定の5地区)で家屋の被害に遭われた方々に、平成24年10月から世帯ごとに調査票を配布し、調査を行いました。うち今回の解析対象は、20歳以上で、K6*2(心理的苦痛を評価)関連の質問を回答した高血圧要治療の方、1,014人です。

【結果及び結論】心理的苦痛が比較的低い方(K6<13)に対する、高い心理的苦痛を有する方(K6≥13)の高血圧治療中断オッズ比が4.0と、有意に高いことがわかりました。この結果は、東日本大震災1年後の沿岸部被災地において、心理的苦痛を有する者で高血圧治療中断が高まったことを示唆しています。沿岸部被災地において心理的サポートを積極的に行うことにより、高血圧治療中断リスクの低減のみならず、循環器疾患予防につながる可能性があると考えられます。

■論文
Psychological Distress and the Risk of Withdrawing From Hypertension Treatment After an Earthquake Disaster
Naoki Nakaya, Tomohiro Nakamura, Naho Tsuchiya, Akira Narita, Ichiro Tsuji, Atsushi Hozawa and Hiroaki Tomita
DOI: 10.1017/dmp.2016.102
論文名邦訳:震災後の心理的苦痛と高血圧治療中断リスク

*1 七ヶ浜健康増進プロジェクト: 東日本大震災以降、七ヶ浜町と東北大学の共同事業として行う、健康づくりへの様々な取組。2011年5月以来、仮設住宅での茶話会と健康相談を重ねると共に、被災者対象の健康調査も行っている。
*2 K6スコア: 心理ストレスを含む精神的な問題の程度を測る尺度として、国際的に広く用いられているもの。米国のKesslerらにより開発され、6問の質問紙調査からなる。うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることなどを目的に、一般住民を対象とした調査で広く利用されている。

関連リンク

身体疾患の治療をしている人は心理的苦痛が大きい傾向~東日本大震災後の七ヶ浜健康増進プロジェクトから~【プレスリリース】
震災1年後の将来の住居の見通しと心理的苦痛リスクの関連」についての論文が Psychiatry and Clinical Neurosciences誌 に掲載されました
Disaster Medicine and Public Health Preparedness
東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門 個別化予防・疫学分野 寳澤研究室