お知らせ

記事一覧
全て
ニュース
成果
プレスリリース
イベント
2025.08.18

高血圧の家族歴、遺伝要因、生活習慣の組み合わせと高血圧発症に関する論文が掲載 

高血圧の家族歴、遺伝要因(ポリジェニックリスクスコア)、および生活習慣の組み合わせが将来的な高血圧発症に与える影響を検討した論文が国際科学誌Hypertension Research誌に掲載されました。

高血圧は遺伝要因と生活習慣が複雑に関与する疾患であり、その予防や早期介入のためには個人のリスクを的確に把握することが重要です。臨床現場では、遺伝的素因の簡便な指標として家族歴が広く用いられていますが、最近では多数の遺伝子情報を基にしたポリジェニックリスクスコア(PRS)が開発され、より精密なリスク評価が可能になってきました。そこで本研究では、家族歴だけでなくPRSを組み合わせることで、高血圧のリスクをより精密に層別化できるのかを検討しました。

本研究では、東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホートのうち、ベースライン調査時(2013年から2017年にかけて実施した1回目の健康調査)に高血圧未診断であった20歳以上の9,001人を対象に、家族歴、PRS、および生活習慣の組み合わせと高血圧発症リスクとの関連を検討しました。BMI、尿中Na/K比、喫煙、飲酒、身体活動に基づく生活習慣スコアを用い、平均4.3年間の追跡期間中に2,822人が高血圧を発症しました。解析の結果、健康的な生活習慣を持ちPRSが低い場合でも家族歴があるとリスクが高く、また家族歴がなく健康的な生活習慣であってもPRSが高ければリスクが高いことが示されました。家族歴、PRS、生活習慣はそれぞれ異なるリスク情報を持ち、これらを統合することで予測モデルの精度は有意に向上しました。

本研究により、家族歴、遺伝的リスク、生活習慣はいずれも高血圧発症に独立して寄与し、それぞれを組み合わせることでより精度の高いリスク層別化が可能であることが示唆されました。今後、個別化予防の実現に向けた活用が期待されますが、PRSの臨床応用にはさらなる検証が必要です。

書誌情報

タイトル:Associations of family history of hypertension, genetic, and lifestyle risks with incident hypertension
著者名:Masato Takase, Takumi Hirata, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ippei Chiba, Sayuri Tokioka, Kotaro Nochioka, Tomohiro Nakamura, Naho Tsuchiya, Hirohito Metoki, Michihiro Satoh, Akira Narita, Taku Obara, Mami Ishikuro, Hisashi Ohseto, Ippei Takahashi, Tomoko Kobayashi, Eiichi N Kodama, Yohei Hamanaka, Masatsugu Orui, Soichi Ogishima, Satoshi Nagaie, Nobuo Fuse, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama, Gen Tamiya, Atsushi Hozawa, Masayuki Yamamoto, and the ToMMo investigators.
掲載誌:Hypertension Research
掲載日:2025年8月13日
DOI:10.1038/s41440-025-02314-9