お知らせ

記事一覧
全て
ニュース
成果
プレスリリース
イベント
2025.08.18

糖尿病の発症における遺伝的なリスクの影響を媒介する代謝物に関する論文が掲載

糖尿病の遺伝的素因が糖尿病発症に及ぼす影響を、血中の特定の代謝物が媒介する可能性を示した研究成果が、糖尿病・心血管領域で権威ある国際科学誌「Cardiovascular Diabetology」誌に掲載されました。

これまで、生活習慣が良好であっても糖尿病の遺伝リスクが高い集団では糖尿病発症リスクが高いことが報告されています。しかし、この集団に対する効果的な予防法は確立されていません。そこで本研究は遺伝的要因と糖尿病発症をつなぐ代謝物に着目し、そのメカニズムの解明および食事介入のターゲットとなる代謝物を探索しました。

今回、東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート参加者12,461人を対象に、糖尿病の遺伝的リスク(PRS)と糖尿病発症の関連、さらにそれを媒介する代謝物の探索を行いました。先行研究と同様にPRSが高いほど、糖尿病発症リスクが有意に高くなっていました。43種類の血中代謝物のうち、14種類が糖尿病発症と正の関連を示し、グリシンは負の関連を示しました。また、PRSと関連する代謝物の一部が、糖尿病発症に対する遺伝リスクの影響を最大7%程度媒介していることが明らかとなりました。

本研究により、糖尿病の遺伝的リスクが特定の代謝物を介して発症リスクを高める可能性が示唆されました。今後、遺伝的に高リスクな人に対する新たな予防法やバイオマーカー開発への応用が期待されます。

書誌情報

タイトル:Association of circulating metabolites and polygenic risk score with incident type 2 diabetes: a prospective community-based cohort study
著者名:Masato Takase, Naoki Nakaya, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Kumi Nakaya, Ippei Chiba, Sayuri Tokioka, Kotaro Nochioka, Tomohiro Nakamura, Naho Tsuchiya, Takumi Hirata, Seizo Koshiba, Kazuki Kumada, Ikuko Motoike, Eiji Hishinuma, Akira Narita, Taku Obara, Mami Ishikuro, Hisashi Ohseto, Ippei Takahashi, Tomoko Kobayashi, Eiichi N Kodama, Yohei Hamanaka, Masatsugu Orui, Soichi Ogishima, Satoshi Nagaie, Nobuo Fuse, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama, Biobank Japan Project; Koichi Matsuda, Yoko Izumi, Kinuko Ohneda, Kengo Kinoshita, Atsushi Hozawa, Masayuki Yamamoto and the ToMMo investigators.
掲載誌:Cardiovascular Diabetology
掲載日:2025年8月14日
DOI:10.1186/s12933-025-02849-8