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2016.10.21

「東日本大震災後の心理的苦痛に対するソーシャルキャピタルの影響、および家屋の損壊と転居の相互作用」についての論文がPsychiatry and Clinical Neurosciences誌 に掲載されました

東北大学東北メディカル・メガバンク機構予防医学・疫学部門の 土屋菜歩助教らは、富田博秋教授が中心となって行われている七ヶ浜健康増進プロジェクト*1に関する論文東日本大震災後の心理的苦痛に対するソーシャルキャピタルの影響、および家屋の損壊と転居の相互作用を発表しました。本成果により、家屋の損壊度が大きく、震災後に転居を経験した者でも、ソーシャルキャピタルが高いと心理的苦痛のリスクがやや小さくなることが明らかになりました。

七ヶ浜健康増進プロジェクトは、東日本大震災以降、沿岸部被災地である宮城県七ヶ浜町と東北大学の共同事業で行われている、健康づくりへの様々な取り組みです。住民を対象とした健康調査も実施しており、同研究グループはこれまでに東日本大震災後の心理的苦痛のリスク因子として、配偶者が慢性疾患の治療をしていること (Tohoku J Exp Med, 2016)、震災後の居住場所が決まっていないこと(Psychiat Clin Neuros, 2015)、自身が身体疾患の治療中であること(Disaster Med Public, 2015)などを報告してきました。

今回の成果はPsychiatry and Clinical Neurosciences誌に2016年10月15日付でオンライン出版されました。

研究内容

【目的】
本研究では、「人との絆」「信頼感」「社会的つながり」を表す「ソーシャルキャピタル」に着目し、ソーシャルキャピタルが震災後の心理的苦痛にどのような影響を与えるのか、その影響の程度は家屋の損壊度や転居の有無によって異なるのか、ということを検討しました。

【方法】
東北大学は七ヶ浜町との共同事業「七ヶ浜健康増進プロジェクト」として、町内(特定の5地区)で家屋の被害に遭われた方々に、平成24年10月から世帯ごとに調査票を配布し、調査を行いました。うち今回の解析対象は、宮城県七ヶ浜町に住む20歳以上で、関連質問にお答えくださった3,793人です。

心理的苦痛の有無はK6 *2(心理的苦痛を評価)で評価し、ソーシャルキャピタルは一般的信頼*3(generalized trust)を指標としました。

【結果及び結論】
家屋の損壊度が大きく(全壊・大規模半壊)、震災後に転居を経験した者でもソーシャルキャピタルが高い(社会的なつながりが多い)とその心理的苦痛のリスクがやや小さくなることが明らかになりました。社会的なつながりの形成、維持が、災害後の心理的苦痛を軽減するために重要であることが示唆されました。

 

■論文
Impact of social capital on psychological distress and interaction with house destruction and displacement after the Great East Japan Earthquake of 2011
Naho Tsuchiya, Naoki Nakaya, Tomohiro Nakamura, Akira Narita, Mana Kogure, Jun Aida, Ichiro Tsuji, Atsushi Hozawa and Hiroaki Tomita
Psychiatry and Clinical Neurosciences
Accepted manuscript online: 15 October 2016
First published: 21 December 2016
DOI: 10.1111/pcn.12467
論文名邦訳:東日本大震災後の心理的苦痛に対するソーシャルキャピタルの影響、および家屋の損壊と転居の相互作用

*1 七ヶ浜健康増進プロジェクト: 東日本大震災以降、七ヶ浜町と東北大学の共同事業として行う、健康づくりへの様々な取組。2011年5月以来、仮設住宅での茶話会と健康相談を重ねると共に、被災者対象の健康調査も行っている。
*2 K6スコア: 心理ストレスを含む精神的な問題の程度を測る尺度として、国際的に広く用いられているもの。米国のKesslerらにより開発され、6問の質問紙調査からなる。うつ病・不安障害などの精神疾患をスクリーニングすることなどを目的に、一般住民を対象とした調査で広く利用されている。
*3 一般的信頼(generalized trust):対象を限定しない、一般的な他者への信頼感

※ソーシャルキャピタルが高く、家屋の被災程度が小さく、転居を経験しなかった者を基準としてオッズ比を算出した。
震災後に転居を経験した者でソーシャルキャピタルが低い場合の、心理的苦痛ありのオッズ比:5.78(95%信頼区間 3.48-9.60)
震災後に転居を経験した者でソーシャルキャピタルが高い場合の、心理的苦痛ありのオッズ比:3.44(95%信頼区間 1.12-10.5)

関連リンク

「東日本大震災後における配偶者の慢性疾患治療と心理的苦痛リスク」についての論文がTohoku Journal of Experimental Medicine誌 に掲載されました
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東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門 個別化予防・疫学分野 寳澤研究室

 

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