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第8回 「好きなことを仕事に」 とは言うけれど

小柴 生造

私はToMMoで体の中の分子の構造を調べる研究を行っています。ToMMoに来たのは6年ほど前ですが、分子の構造を調べるようになってからは、もう20年以上になります。主に使っている装置もずっと一緒。NMRという装置です。
ずっとおんなじ事をやっていて山あり谷ありとか全然ない。だから、特に話すような事はないと思うんだけどなぁ……。

(小柴 生造 オミックス解析室長/生体分子解析分野 教授)

何でもいい。好きとか嫌いとかない

子どもの頃好きだった科目? ないですね。父は生物系の研究者でしたが、だからと言って理科が好きとか、かといってこの科目は嫌いとか、なかったですね。じゃあ、勉強以外の何かにのめりこむとか、それもなかったです。特にこの職業に就きたいとか、こんな勉強をしたいとか、そういうこともなく、高校が進学校だったし、兄が卒業生だったこともあり東京大学に入学しました。

高校3年の小柴教授

入学したのは東京大学の理科Ⅰ類ですが、東大というのはわりと自由に専門分野を選ぶことができて、入った時は理科Ⅰ類だとしても、医学部とか何なら文系にだって進むことができるんですよ。成績次第ですけれど。理科Ⅰ類だけでもカバーしている領域が幅広くて、理系だったら何でもアリという感じでした。

特にこれをやりたい、という事もなかったので、その「何でもアリ」のシステムは私に合っていたわけですが、学年が上がりいよいよ専門分野を決めなければならない時がやってきました。結局私が選んだのは生物化学という分野でした。なぜ生物化学を選んだのかって? あー、なぜでしょう? その理由は…、そうですね。物理や化学に比べて生物学はまだまだ解らないことが多い、少なくともその頃は解らないことが多いように感じました。当時はゲノム解読もまだ完了していなくて、その一方でPCRとかいろんな分子生物学のツールが使えるようになってきたんですね。これから新たにいろいろなことが解ってくる分野だと感じました。
あとはそうですね、その頃、素粒子とかニュートリノとかそういう研究が始まってきたのですけど、そういうビッグプロジェクトの一員としてプロジェクトの一部になって働くよりは最初から最後まで自分一人で完結できるような世界で生きたかった、それが本音です。そうですね、それがその時生物化学を選んだ一番の理由です。

4年生になると生物化学の中でも、より専門の研究分野を決めなければならなくなりました。いわゆるハエとか線虫とかを使う研究よりは分子の世界の方がいいかな、と思ったので、タンパク質の構造を調べる研究室に入りました。そこにNMR装置があったのです。

NMRとの出会い

NMRとは、Nuclear Magnetic Resonance(核磁気共鳴)の略で、NMR装置を使うと磁場を利用して物質の構造を解析することができます。研究室には、高磁場のNMR装置がありました。生物系、特にタンパク質などの構造解析に使うような高磁場のNMRは80年代から90年代にかけて普及してきていて、ちょうど私が研究室に入った頃に日本でも使われるようになっていたのです。それにしても、それからかれこれ20年以上NMRに付き合うことになるとは…、その時は思いもしませんでした。
研究室の教授が理化学研究所(理研)を兼務していたことと、あとは研究室の事情もあったりして、スタッフの中でタンパク質を研究している10人程度のグループが埼玉県和光市の理研で実験することになりました。そこから、大学院に進んで、そのまま理研に就職して、ずっと理研。かれこれ20年近く理研で働いたことになります。働く、ええ、大学生の時も大学院生の時も就職してからも、基本は、課題のために実験して論文を書いて、その繰り返し。タスクをひとつひとつこなしていく日々で、やっていることは、在学中も就職してからもほぼ同じでした。
タスクをこなす、という意味では変わりはないのですが、職に就いて違っていたことは「システム作り」です。理研に入ってすぐに「タンパク3000」というビッグプロジェクトが立ち上がり、そのプロジェクトをスムーズに進めて成功させる、というタスクが与えられました。ものごとを期限内にゴールに到達させるためにはそのための仕組み、つまりシステムが必要です。理研ではシステム作りを何度もやりました。国の予算の関係上、大体5年毎に目標が設定されるので、その都度、目標に沿ってシステム作りをするわけです。一人で完結できるから、という理由で生物化学という分野を選んだ、それなのに、ほとんどビッグプロジェクトの一員として過ごす日々でした。

NMR装置(Bruker 800 NMR)

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