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2025.09.08

高血圧管理・治療ガイドライン2025にToMMoの研究成果が反映されました

2025年8月29日発行の「高血圧管理・治療ガイドライン2025」の
「第2部:高血圧患者の管理・治療 第7章 生活習慣の改善」に、ToMMoで実施している尿ナトカリ比研究に関連した内容、
「第3部:特殊な病態および二次性高血圧の管理・治療 第13章 周産期女性の高血圧」に、三世代コホート調査で実施している妊娠高血圧症候群のリスク要因の検討に関連した内容が追加されました。

尿ナトカリ比

ガイドラインに追加された内容は以下のとおりです。
▪ 生活習慣の改善項目の一つに、減塩・カリウム摂取増加によるナトカリ比の低下が追加されたこと
▪ 2024年に公開された日本高血圧学会尿ナトリウム(Na)/カリウム(K)比(尿ナトカリ比)ワーキンググループのコンセンサス・ステートメントに基づき、健常日本人における尿ナトカリ比の目標値として、日本人の食事摂取基準の食塩とカリウムの目標量に相当する2未満を至適目標に、日本人の平均値未満に相当する4未満を実現可能目標に設定すること
▪ 減塩および血圧コントロールを目的としたスポット尿ナトカリ比測定の科学的根拠は現段階では十分ではなく、さらなる知見の蓄積が必要であるものの、地域の健康診断において尿ナトカリ比を測定し、その場で結果を返却し、減塩とカリウム摂取の増加に関する情報提供を行ったところ、翌年の健康診断時に尿ナトカリ比と血圧値の有意な低下を認めたことから、健康診断時など一定の採尿条件下での1回のスポット尿ナトカリ比測定と保健指導の併用が減塩や血圧コントロールに有効である可能性が示唆されたこと

なお、
▪ 日本人の地域住民を対象とした大規模な研究では尿ナトカリ比と血圧値との間に正の関連が認められていること
▪ 地域の健診で尿ナトカリ比を測定し、その場で結果を返却し、減塩とカリウム摂取の増加に関する情報提供を行った結果、翌年の健康診断時に尿ナトカリ比と血圧値の有意な低下を認めたこと
についてはToMMoからの論文が複数引用されています。

引用論文情報

オムロンヘルスケア社との共同研究の論文(単日あるいは複数日測定の尿ナトカリ比と高血圧有病率との関連)がHypertension Research誌に掲載されました
地域住民コホート調査から高血圧の危険因子と収縮期血圧の関連に関する論文が掲載
尿ナトカリ比は低ければ低いほど高血圧有病リスクが低い、尿ナトカリ比は2.0を目標に -オムロン ヘルスケア株式会社との共同研究が国際科学誌に掲載-
“ナトカリ比測定”が集団に対する高血圧対策に有効な可能性を確認 ~塩と野菜の摂取バランスと血圧との関連を確認~【プレスリリース】

妊娠高血圧症候群のリスク要因

妊娠高血圧症候群の非薬物療法に関する知見として以下の内容がガイドラインに追加されました。
・ 妊娠高血圧症候群のうち、妊娠高血圧腎症の予防には、果物や野菜を多く含む食事が有益であること、カルシウム補充やビタミンDが有効である可能性
・ 妊娠高血圧腎症の発症リスクには、総エネルギー量の高摂取及びマグネシウム・カルシウムの低摂取が関連していることが報告されていること。しかしながら、コクランレビューではカルシウム補充の有効性については情報が不足していること
・ 本邦の研究では、東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査において、朝食の欠食やカルシウム・カリウムの低摂取が妊娠高血圧症候群や妊娠高血圧腎症に関連していることを報告している一方、他の調査ではカルシウム摂取と妊娠高血圧症候群との関連は認められなかったという報告があること。

引用論文情報

妊娠中のカルシウム摂取量と妊娠高血圧腎症のリスクを検討した論文がJournal of Clinical Hypertension誌に掲載
三世代コホート調査をもとにした「妊婦の朝食欠食と妊娠高血圧症候群」に関する論文がNutrition Journal誌に掲載されました

「高血圧管理・治療ガイドライン」は、日本高血圧学会がほぼ5年おきに作成している高血圧の診断・治療・予防に関する標準的な指針を示したものです。前回発行された2019年版までのタイトルは「高血圧治療ガイドライン」でしたが、今回の発行から「管理」が追加され、血圧を下げる行動の重要性を、より強調する内容となっています。
ガイドラインに記載のある通り、近年の尿ナトカリ比に関する疫学研究の進歩を受けて、日本高血圧学会のコンセンサス・ステートメントに、これまで具体的に設定されていなかった健常日本人における尿ナトカリ比の目標値が提唱されました。目標値が設定されたことで、臨床現場や保健指導の現場における活用が期待されます。
また、尿ナトカリ比は、全国の健診機関や医療機関において、採血と比べて安価かつ少ない負担で容易に測定が可能です。
ガイドライン掲載を契機に、血圧コントロールのための減塩とカリウム摂取増加の指標として、尿ナトカリ比が一層活用されることを期待します。
一方、妊娠高血圧症候群は、妊産婦の5-10%に認められる代表的な周産期合併症であり、三世代コホート調査では重点疾患の一つとしてリスク要因を詳細に検討しており、得られた結果を基に疾患発症リスク予測モデルの開発に取り組んでいます。現在は、プロトタイプに他の出生コホートとの連携で明らかとなった最新のリスク因子や遺伝的リスクスコア(ポリジェニックリスクスコア)も加えて予測精度の向上を試みています。さらに、自治体や医療機関等での活用に向けて協議を重ねているところです。また、妊娠高血圧症候群のリスク要因のみならず、お母さんの産後の高血圧やお子さんの出生時の低体重といった母児の予後への影響についても研究が進んでおります。お母さん、お子さん、ご家族がより健やかに生活できる社会の実現に向けて、ToMMoはこれからも得られた知見を発信できるよう努めてまいります。

書誌情報

【書籍名】高血圧管理・治療ガイドライン2025
【出版社】ライフサイエンス出版
【編集】日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会
【ISBN】978-4-89775-503-8
【判型・頁】A4変形判、304ページ
【定価】4,180円
【出版日】2025年8月29日

関連リンク

日本高血圧学会 高血圧治療ガイドライン