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2020.11.20

妊娠高血圧腎症に罹患した母児を対象とした長鎖型次世代シークエンサーによるHLA-Gの全ゲノム解析論文がScientific Reportsに掲載

菅原準一教授、熊田和貴准教授、安田純客員教授の研究グループは、長鎖型シークエンサーを用いて、これまで短鎖型シークエンサーでは解読が困難であったHLA(ヒト白血球抗原)-G領域の全ゲノム解析を行い、論文がScientific Reports誌(Nature Research社)に掲載されました。

本研究は、当機構の推進する三世代コホートに参加された妊娠高血圧腎症及び正常妊娠の母児ペアを対象として、妊娠時の免疫寛容に重要な役割を果たしているHLA-G遺伝子の解読を行いました。

妊娠高血圧腎症は原因不明の多因子疾患で、複雑な遺伝環境相互作用で発症すると考えられており、母と胎児における免疫寛容の破綻が、原因の一つとしてあげられています。

HLA領域は、個人間における配列の違いが大変大きく、多数の遺伝的多様体が報告されていることもあり、従来の次世代シークエンサー(短鎖型)ではゲノム解読が難しい領域として知られています。

本研究では、このような課題を克服するため、長鎖型シークエンサーを用いた全ゲノム解析を行い、妊娠高血圧腎症の母児ペアに特徴的にみられる新規対立遺伝子を発見しました。加えて、妊娠高血圧腎症とHLA-G*01:01:01:01対立遺伝子の下流領域内に存在するTストレッチ(チミンの繰り返し:本研究では17~43 bp)との間に関連性を見出しました。

これまで、妊娠高血圧腎症を対象とした長鎖型シークエンサーを用いたHLA-G解読の報告はなく、疾患との関連が推測される新規対立遺伝子およびTストレッチの存在を初めて報告した成果となります。

本研究は、HLA-G遺伝子を対象とした、妊娠高血圧腎症の原因究明に対する新しいアプローチとして、これまで不明であった病態解明への端緒となり、将来における予防・治療法開発につながる成果が期待されます。

書誌情報

タイトル:Analysis of HLA-G long-read genomic sequences in mother–offspring pairs with preeclampsia
著者名:Ayako Nishizawa, Kazuki Kumada, Keiko Tateno, Maiko Wagata, Sakae Saito, Fumiki Katsuoka, Satoshi Mizuno, Soichi Ogishima, Masayuki Yamamoto, Jun Yasuda & Junichi Sugawara
掲載誌:scientific reports
Published:18 November 2020
DOI:10.1038/s41598-020-77081-3