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2019.05.22

「脳と心の健康調査」のデータ分譲開始

2014年7月から開始した「脳と心の健康調査」のデータのうち、2017年3月までに調査に参加された約4,300人分について、核磁気共鳴画像法(MRI)による脳構造画像の解析値、認知・心理検査の値の分譲を開始します。
分譲する脳構造画像の解析値は、同一機種のMRI装置で同一のプロトコルにより収集された三次元収集T1強調画像を、FreeSurfer*1という解析ソフトを用いて、脳領域ごとに表面積、厚さ、体積を算出した数値情報です。
また、認知検査結果は、注意・処理速度に関係した検査項目のデータ、心理検査は東日本大震災による心的外傷後ストレス反応*2(PTSR)、現在の精神的健康、及び性格傾向等のデータであり、脳構造情報との関連解析に活用することができます。
なお、「脳と心の健康調査」の参加者は、2019年4月末時点において1万800人に到達しています。

調査概要

「脳と心の健康調査」の目的は、東日本大震災後に増加が懸念される心的外傷後ストレス反応(PTSR)やうつ病などの精神疾患の発症、それらが脳構造に与える影響、さらには長期的にみて認知機能へ及ぼす影響について調査することです。このため、同一機種の3テスラMRIを2台導入して(Philips, Ingenia)、脳の形態、血管、血流、脳領域間の白質線維連絡に関する脳画像情報を収集しています。心理検査としては、アンケート調査法によりPTSRうつ、不安、全般的な精神的健康、アレキシサイミア*3傾向といった心の健康に関する情報を収集しています。加えて、認知機能の中でも記憶、言語、注意・処理速度に関する検査を実施しています。

公開データ概要

今回の分譲の対象となるデータは、「脳と心の健康調査」で収集している情報のうちの以下のデータであり、性別、年齢、既往歴といった参加者基本情報が付帯します。これらのデータは、統合データベース「dbTMM」リリース2.1.0に格納します。(統合データベースdbTMMカタログ 2.1.0 は こちら から)

分譲データリスト

MRI検査
三次元収集T1強調画像の解析値情報 FreeSurferというソフトにより解析された脳領域ごとの表面積、厚さ、体積に関する数値情報(図1参照)
心理検査
PTSR関連 「三次元モデルにもとづく対処方略尺度」
「改訂出来事インパクト尺度」
現在のうつ・不安関連 「10項目版自覚ストレス調査票」
「DASS-15日本語版」
全般的な精神的健康 「自尊感情尺度」
アレキシサイミア関連 「日本語版TAS-20」
「失体感尺度」
性格傾向 「NEO-FFI人格尺度」
利き手検査

「エジンバラ利き手テスト」

今後の展望

「脳と心の健康調査」はすでに1万人を超える参加者からの協力を得ています。今後の展望としては、今回の分譲対象に含まれていない脳画像データ、認知検査、心理検査のデータ分譲や人数の1万人分への拡大が大きな目標となります。また、ゲノムを含む各種解析情報、コホート調査情報との関連解析にも取り組むことで、被災地の長期的な健康支援を実現するための研究に役立つデータを提供することができます。これらを活用した研究成果が蓄積されていくことで、被災地居住者の生涯健康脳の維持に大きく貢献できるだけでなく、認知機能や心理的健康の観点から見た各種疾患の個別化予防、個別化医療の確立に結びつくことを期待しています。

用語解説

*1 FreeSurfer:脳形態画像より頭蓋内脳容積、全脳灰白質容積、白質容積、各皮質領域の表面積、厚さ、体積、皮質下の領域ごとの体積を計測できるソフトウェア
https://surfer.nmr.mgh.harvard.edu/fswiki

*2 心的外傷後ストレス反応(PostTraumatic Stress Response):あやうく死ぬ、または重症を負うような出来事、あるいは自分または他人の身体の保全に迫る危険を体験したり、目撃したり、直面することによる心的外傷反応(こころの傷)。

*3 アレキシサイミア:機械的な思考、空想能力の乏しさ、自身の感情を表現し、伝達するため適切な言語表現に困難のある心理傾向

 

図1. 脳構造画像のFreeSurfer解析値の各年代の比較 左に灰白質容量、右に海馬容量を示した。容量は頭蓋内容積情報を用いて補正。

 

関連リンク

統合データベースdbTMMカタログ

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