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2018.12.19

喫煙の害は大きく、体格維持のための喫煙継続は論外 -日本人の体格指数と総死亡の関連を詳細に検討した論文を発表-

理想的な体格の喫煙者の死亡リスクは非喫煙者の最もハイリスクな体格の者よりも高い―厚生労働科学研究班の成果として―

東北メディカル・メガバンク機構の寳澤篤教授らは、参画している厚生労働科学研究「生涯にわたる循環器疾患の個人リスクおよび集団のリスク評価ツールの開発を目的とした大規模コホート統合研究」(H29-循環器等-一般-003)研究班の成果として、日本人における体格指数(Body Mass Index, BMI、体重kg/身長m2)と全死亡リスクの関連を報告しました。
日本人においてBMIが総死亡とU字型またはJ字型の関連を示すことが知られていましたが、これらの関連は喫煙歴や健康状態により異なる可能性がありました。そのためBMIと総死亡リスクの関連を詳細に分析するために、大規模統合データベースを用いて詳細に検討したものです。
解析対象は、日本における13のコホート参加者179,987名(男性68,282名、女性111,705名、平均年齢58.7歳、平均BMI 23.3kg/m2)です。BMIと総死亡リスクの関連はコホート層別化Cox比例ハザードモデルを用いて検討し、年齢・性・喫煙歴による調整を行いました。またBMIと年齢・性・喫煙歴の交互作用についても検討しました。

その結果、全解析対象者においてBMIと総死亡リスクの関連がU字型を示しており(図1)、BMI 22.0-24.9kg/m2群で総死亡リスクが最も低いことが明らかとなりました。この分析の際、「やせ」での総死亡リスク上昇が強調される結果となりましたが、何らかの病気を保有することによって、痩せている可能性、喫煙により痩せている可能性が考えられるため、健康状態の良好な対象者(非喫煙者、TC 160mg/dL以上、5年以上の追跡が可能)に絞った解析を実施しました。その結果、過体重と総死亡リスクの関連がやや明瞭になりましたが、「やせ」と総死亡リスクの関連は大きく変わりませんでした(図2)。さらに年齢・性・喫煙歴で層別化してもBMIと総死亡リスクの関連は変わりませんでした。

●図1
図1:全解析対象者におけるBMIと総死亡の関連(横軸:BMI(kg/m2)、縦軸:全死亡HR)

●図2
図2:低栄養者、喫煙者、早期死亡者を除外して解析したBMIと総死亡の関連(横軸:BMI(kg/m2)、縦軸:全死亡HR

一方、非喫煙者のすべてのBMI群における総死亡リスクは、喫煙者における最もリスクが低いBMI群と比較し、低くなることが明らかとなりました(図3)。すなわち理想的な体格の喫煙者は、最も死亡リスクの高い体格の非喫煙者よりも死亡リスクが高いことが明らかとなりました。

●図3
図3:全解析対象者におけるBMIと総死亡の関連 現在喫煙、非喫煙層別化
非喫煙者の総死亡リスク最大群と比べ喫煙者の総死亡リスク最低群でリスクが高い(横軸:BMI(kg/m2)、縦軸:全死亡HR)

【結論】全対象者・健康状態の良好な対象者のいずれにおいても、BMIは総死亡リスクとU字型の関連を示し、BMI 22.0-24.9kg/m2群で総死亡リスクが最も低いことが明らかとなりました。喫煙の害は大きく、体格維持のための喫煙継続は論外であり、早期に禁煙を勧める重要性も明らかとなりました。

 

【掲載論文】
タイトル:Association between body mass index and all-cause death in Japanese population: pooled individual participant data analysis of 13 cohort studies
著者名:Atsushi Hozawa, Takumi Hirata, Hiroshi Yatsuya, Yoshitaka Murakami, Shinichi Kuriyama, Ichiro Tsuji, Daisuke Sugiyama, Atsushi Satoh, Sachiko Tanaka-Mizuno, Katsuyuki Miura, Hirotsugu Ueshima, and Tomonori Okamura.
掲載誌:Journal of Epidemiology
掲載日:2018年11月3日
doi:10.2188/jea.JE20180124

 

関連リンク

生涯にわたる循環器疾患の個人リスクおよび集団のリスク評価ツールの開発を目的とした大規模コホート統合研究(厚生労働科学研究成果データベース)