東北メディカル・メガバンク機構

お知らせ

記事一覧
全て
ニュース
イベント
成果
メディア
2012.12.19

第二回ToMMoクリニカル・フェロー連絡会が開かれました

2012年11月13日、仙台市の東北大学星陵キャンパスで、第二回ToMMoクリニカル・フェロー連絡会が開かれ、「大規模疫学研究と脳MRI」をテーマにした勉強会も併催されました。

連絡会の中で勉強会を行う主な目的は、震災後に復興事業として当機構が設立された背景や、機構の事業に関係する研究動向等に対してフェロー達が理解を深めることです。またフェローが自分の専門分野以外の知識を得る機会を増やす狙いもあります。今後様々なテーマで勉強会が行われる予定です。

本日は地域医療支援部門の瀧靖之教授(画像解析医学分野)が講師となり、勉強会を行いました。MRI等を用いた脳の画像診断と疫学を組み合わせた研究が専門の瀧教授が、この二つが組み合さったデータベースにより何が可能になるのかを、フェローに伝えました。

image

MRIは一般に知られているような身体の断面(二次元)画像の撮影に限らず、立体(三次元)的なデータをも収集できる機器です。昨今、MRI関連ソフトウェアの開発が進み、様々な解析や画像処理をPCで簡単に行えるようになりました。脳の各部位の形態や体積が調べられる以外にも、時間と共に変化する脳血流の状態を追え、複雑な血液の流れを評価できます。こうした解析は診断にも研究にも応用されています。

近年、脳の包括的データベースが疫学研究に用いられるようになり、その重要性が増してきました。このデータベースは、MRI等で取得した脳のデータに加え、認知力、生活習慣、遺伝子の4種類のデータから構成されます。このデータベースが発展することで、脳の発達や加齢に何が影響しているのかについて調べる研究が進み、またアルツハイマー病等の認知症といった種々の疾病の発症メカニズムを明らかにし、それらの発症の予防や診断に役立つと期待されています。

最近の研究で、脳の一領域である海馬の体積と記憶力に相関関係があることがわかってきました。実は海馬体積の減少は、アルツハイマー病のリスク因子とみなされています。

海馬の体積は成人になっても変化しますが、その体積に影響を与える要因は様々です。例えば肥満や運動も影響すると考えられていますし、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の罹患と海馬の体積との間に相関関係が観察された報告もあります。さらに、ロンドンの入り組んだ街並みを走るタクシー運転手は記憶負荷が大きいと考えられることから、彼らの何人かをMRIで調べたところ海馬が有意に大きかったという英国のエピソードを織り交ぜて、瀧教授の解説は進みました。

なお瀧教授は今年、睡眠と海馬体積に相関関係が観察されたことを発表しています。

関連リンク:“記憶にかかわる脳の海馬は、睡眠時間が長い子供のほうが、より大きい“ 瀧靖之教授の研究が第35回日本神経科学大会・記者会見で取り上げられました。

他にも瀧教授は四川大地震、カトリーナ台風、地下鉄サリン事件といった災害やテロの体験と海馬等の脳体積との関係について調べた研究を取り上げました。また災害によるPTSD海馬体積の減少の間に相関関係が見られた報告例を紹介しました。

さて、脳の包括的データベースの構成要素の一つである認知力ですが、どんなメカニズムで認知力低下が起きるのかは明らかではなく、研究の対象となっています。脳の包括的データベースで調べると、概して認知力低下が症状に現れるよりも前の時点で、MRIデータ(海馬体積や脳血流や脳形態等)に変化が現れます。そのためにMRIは、アルツハイマー病等の認知症の早期診断と予防に使用できる可能性が考えられ、なおかつ研究の指標としても優れていると、瀧教授は指摘しました。

 世界でも有数の大規模な疫学研究事業であるドイツのナショナルコホート、イギリスのUKバイオバンク、オランダのジェネレーションRでは、MRIを活用して脳の包括的データベースの充実を進めています。脳の包括的データベースが疫学研究と結び付くことで、脳のデータと遺伝子や疾患や生活習慣を一緒に解析して疾患の要因を調べる研究が発展すると期待されています。

ところで疾患は遺伝子のみが原因で発症するものばかりではありません。多くの疾患では、特定の生活習慣に親しむことで、ある遺伝子を持つ人の疾患リスクが変動します。この場合は生活習慣の改善により疾患リスクを下げることができ、その遺伝子を持つ人の発症が予防できます。

この予防法の開発には脳の包括的データベースのような、身体のデータと遺伝子や生活習慣を体系的に解析できるデータベースが役立ちます。さらに脳の包括的データベースの応用として、地震等の災害を体験してPTSDになった場合にはどう対処すれば症状を軽減したり重症化を防げるのかを、個別の遺伝子型ごとに明らかにすることが期待されます。

このように脳の包括的データベースは、これからの医学で威力を発揮する強力なツールになるため、このデータベース作りと、データベースを通した研究の発展による「生涯健康脳」の実現を、世界中の研究者が目指していると瀧教授は指摘しました。

瀧教授の話の後には、実際のMRI検査のあらましや、MRIを用いた研究の応用について質疑応答がなされました。

勉強会終了後は、ToMMoクリニカル・フェローの働く地域医療機関での環境整備について話し合いが持たれ、また聴講していた教員からもフェローへ助言がなされました。

勉強会は今後も講師を迎えて行われる予定です。

勉強会資料(PDF)

関連リンク

東北メディカル・メガバンク機構

お知らせ
2017.10.23| 三枝大輔講師らの執筆記事が日本質量分析学会の学会誌に掲載されました 2017.10.23| 第16回倫理・法令・社会連続セミナー(講師:及川正範先生(東京大学))を開催しました(9月4日) 2017.10.23| 卵巣明細胞癌に生じるゲノム異常に関する論文が掲載されました 2017.10.23| 山本雅之機構長・荻島創一准教授らが執筆した実験医学増刊号『ヒト疾患のデータベースとバイオバンク』が発行されました 2017.10.20| 熊本こころのケアセンター・熊本県精神保健福祉センターの皆さまがToMMoを来訪されました

Copyright(C) Tohoku University Tohoku Medical Megabank Organization All Rights Reserved.