未知のなかば 未知先案内人

interview

第5回 情報を土台に未来を支える

一人ひとりに合わせた医療と予防を目指すToMMo

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医療情報を研究に役立てたいと思うなか、そして難病患者の難病研究支援の患者レジストリの運営に関わるなか、ToMMoが一人ひとりに合わせた医療を目指していると聞いて、2012年から東北で働きはじめました。難病とはまた違った病気を、何万人ものデータが集まる場所で研究できるのは魅力でした。一人ひとりに合わせた予防や医療の実現を掲げるプロジェクトとしては、ToMMoは日本最大の規模です。ここで未来をみすえてデータベース作りや研究に携わりたい、そして医療情報を医学研究に役立てる研究のノウハウをアメリカから学び日本に合う形に変えて、これまで僕が培ってきた手法に加えていければと願っています。
ToMMoはコホート調査で健康状態、生活習慣や環境曝露などのデータを集め、さらにゲノムやメタボロームなどの生体小分子のデータも集めます。膨大な情報量ですよ。これらのデータを一つのデータベースにまとめて、研究に活用する仕組みを作ることが僕の仕事です。そして、このデータベースのうえで、もう一つ取り組んでいるのが、医療情報を研究に役立てること、「コホートの参加者の方々がどのような疾患を発症するか」を医療情報により追いかける仕組みを作ることです。参加者の健康状態や、どんな病気にかかったのかという情報をまとめる枠組みを作り、プライバシーを保護しつつ、何年も追跡して調査する研究ができるようにします。どちらもしっかりした仕組みを整えなければなりませんし、何十年もの使用に耐えられるように設計には気を配っています。一人ひとりに合わせた予防や医療の時代をどうやって実現させるのか、そのために医療情報をいかに役立てていくのか。それは、いま僕が挑戦すべき仕事だと思います。
僕の仕事は、直接患者さんを診るわけでも、薬そのものを作るわけでもありません。あくまでも新しい医療を開発する土台に当たるデータベースを造り、個々の研究者に多彩な研究を展開してもらう。いわばバトンを引き継ぐのが前提の仕事です。そうやって渡したバトンの先から何が生まれてくるのかは、自分の手をはなれたところにあります。土台を造るとは、そういうことです。ただそこからは未来が生まれていきますし、予想もしなかった素晴らしいものが生まれるのかもしれません。
次の時代への準備は一人で完結する仕事ではありません。未来は多くの人の手で作り、子どもたちへ残す財産なのです。

【2014年6月仙台市東北大学東北メディカル・メガバンク棟にて】

(プロフィール)
東京大学工学部計数工学科卒業(2000年3月)、東京医科歯科大学大学院修了(博士(医学))。同大学助手・助教、ハイデルベルク大学 定量システム生物学研究所(BIOQUANT) 客員研究員を経て、12年5月から東北メディカル・メガバンク機構医療情報ICT部門バイオクリニカル情報学分野講師、14年10月から准教授。15年6月から統合データベース室長。[2015年12月現在]

(担当:影山麻衣子)

 

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