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2025.07.09

一般集団における多遺伝子リスクスコアの役割、その現状と将来展望に関する論文が掲載

ポリジェニックリスクスコア(PRS)は、生まれつき持っている多数の遺伝的特徴をもとに、将来の病気のなりやすさを数値で表す指標です。特に心筋梗塞や脳卒中といった動脈硬化性疾患において、PRSが新たな予測手段として注目されています。従来の予測では、血圧やコレステロール値、喫煙習慣などの情報をもとに判断されていましたが、これらだけでは十分に説明できない部分があることが知られています。そこで、もともと持っている体質に関わる遺伝情報を活用し、多くの人が共通して持つわずかな遺伝子の違いを組み合わせてより早い段階で疾患のリスクをとらえようとするのがPRSの考え方です。

本研究では、日本人を対象としたこれまでの研究を整理し、高血圧や糖尿病、脂質異常症 、心筋梗塞や脳卒中などに関するPRSの活用例をレビューしました。これまでの成果から、PRSはそれぞれの疾患発症リスクと関係しており、生活習慣や家族歴による影響を超えて発症リスクを評価できることが分かってきました。また、健康的な生活を送っていてもPRSが高いと病気になりやすい傾向があることや、逆にリスクが高くても生活習慣によってある程度リスクを下げられる可能性があることも示されています。

PRSは一度の遺伝子検査で生涯にわたるリスクを把握できるという特徴があります。しかし、疾患発症には生活習慣の影響も大きく、PRSだけで全てを判断できるわけではありません。そのため、どのように医療や健康づくりに活かしていくかはまだ模索中です。今後は、どのような人にPRSが特に有効か、どのタイミングで活用するのがよいかを明らかにする研究が求められます。こうした取り組みを通じて、一人ひとりに合った病気の予防や早期発見が可能になることが期待されます。

書誌情報

タイトル: The role of polygenic risk score in the general population: Current status and future prospects
著者名:Masato Takase, Atsushi Hozawa
掲載誌:Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
掲載日:2025年7月4日
DOI:https://doi.org/10.5551/jat.RV22039