お知らせ
呼吸器・免疫疾患と心血管代謝疾患の遺伝的背景の多様性を解析 〜東アジア系集団と欧州系集団では、両疾患が逆方向の遺伝的相関を示す~【プレスリリース】
研究成果のポイント
・ 約106万人の東アジア系集団と欧州系集団のゲノムデータを用いて12種類の呼吸器・免疫疾患と心血管代謝疾患の大規模ゲノム解析を実施し、これらの疾患の合併(多疾患併存)の遺伝的関係を調査
・ 東アジア系集団では、呼吸器・免疫疾患の遺伝的リスクが上昇すると、心血管代謝疾患の遺伝的リスクが低下することが示された。一方、欧州系集団では、呼吸器・免疫疾患の遺伝的リスク上昇が心血管代謝疾患の遺伝的リスク上昇と関連することが明らかに
・ 疾患の遺伝的リスクをメタボローム、プロテオームデータと比較することにより、集団間での遺伝的多様性の影響を受ける生物学的パスウェイや血中脂質、タンパク質のバイオマーカーを発見
・ 呼吸器・免疫疾患と心血管代謝疾患を同時に発症する患者への個別化医療の予測精度の向上への貢献に期待
概要
大阪大学大学院医学系研究科の山本悠司さん(博士課程)(遺伝統計学/呼吸器・免疫内科学)、白井雄也 助教(遺伝統計学/呼吸器・免疫内科学)、岡田随象 教授(遺伝統計学/東京大学大学院医学系研究科 遺伝情報学 教授/理化学研究所生命医科学研究センター システム遺伝学チーム チームリーダー)、東京大学 大学院医学系研究科の山内敏正 教授、門脇孝 東京大学名誉教授(虎の門病院 院長)らの共同研究グループは、喘息などの3種類の呼吸器・免疫疾患と、関節リウマチ、脂質異常症などの7種類の心血管代謝疾患、およびこれらに関連する特徴や性質を対象に、遺伝的関連を調査しました。(図1)。
その結果、呼吸器・免疫疾患と心血管代謝疾患の遺伝的リスクの関係が東アジア系集団と欧州系集団で異なることを発見しました。また、これらの疾患で遺伝的リスクが逆方向に関連する生物学的パスウェイを発見し、メタボロームやプロテオームなどとの統合解析により、遺伝的リスクとの関連が異なるバイオマーカーを発見しました。
本研究成果によって呼吸器・免疫疾患と心血管代謝疾患を合併するメカニズムの理解が進み、将来的にこれらの疾患の予防や個別化医療へ貢献することが期待されます。
この成果は、2025年4月28日(月)18時(日本時間)に英国科学雑誌Nature Communicationsにオンライン掲載されました。
論文情報
タイトル:Dissecting cross-population polygenic heterogeneity across respiratory and cardiometabolic diseases
著者:Yuji Yamamoto, Yuya Shirai, Kyuto Sonehara, Shinichi Namba, Takafumi Ojima, Kenichi Yamamoto, Ryuya Edahiro, Ken Suzuki, Akinori Kanai, the BioBank Japan Project, Yoshiya Oda, Yutaka Suzuki, Takayuki Morisaki, Akira Narita, Yoshito Takeda, Gen Tamiya, Masayuki Yamamoto, Koichi Matsuda, Atsushi Kumanogoh, Toshimasa Yamauchi, Takashi Kadowaki, and Yukinori Okada
掲載誌:Nature Communications
DOI:10.1038/s41467-025-58149-y