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2020.11.24

難治性肺がんの幹細胞性を制御するゲノム領域の発見 難治性肺がんの制圧に向けて【プレスリリース】

発表のポイント

・抗がん剤耐性を示し難治性であるNRF2活性化がんで、がん幹細胞性に関わるゲノム領域と責任遺伝子を発見しました。
・がん幹細胞性を担う責任遺伝子である NOTCH3 を抑制することで、効果的にNRF2 活性化がんを抑制できることを明らかにしました。

概要

転写因子NRF2*1は、正常な状態では生体防御に関わる様々な遺伝子を活性化することで私達の健康維持において重要な役割を果たしています。しかし、異常に活性化すると極めて予後不良な非小細胞肺がん(NRF2活性化がん)の原因となります。東北大学加齢医学研究所遺伝子発現制御分野の岡崎慶斗助教、関根弘樹講師、本橋ほづみ教授の研究グループは、同呼吸器外科学分野の岡田克典教授、東北大学医学系研究科・鈴木貴教授、同情報科学研究科/東北メディカル・メガバンク機構・木下賢吾教授らと共同して、NRF2活性化がんにおいて、がん幹細胞性*2 の維持に必須のゲノム領域を発見しました。このゲノム領域はNRF2活性化がんで特異的に機能を発揮し、NOTCH3タンパク質*3を増加させることにより、がん幹細胞性を支えていることが明らかになりました。本研究成果は、抗癌剤耐性を示すNRF2活性化がんに対する有効な治療戦略になることが期待されます。
本研究成果は、11月20日に英国の学術誌Nature Communications 誌に掲載されました。

 

論文題目

タイトル:Enhancer remodeling promotes tumor-initiating activity in NRF2-activated non-small cell lung cancers
邦題:「NRF2 が活性化した非小細胞肺がんにおいて、エンハンサーリモデリングががん幹細胞性を促進する」
著者:Keito Okazaki, Hayato Anzawa, Zun Liu, Nao Ota, Hiroshi Kitamura, Yoshiaki Onodera, Md. Morshedul Alam, Daisuke Matsumaru, Takuma Suzuki, Fumiki Katsuoka, Shu Tadaka, Ikuko Motoike, Mika Watanabe, Kazuki Hayasaka, Akira Sakurada, Yoshinori Okada, Masayuki Yamamoto, Takashi Suzuki, Kengo Kinoshita, Hiroki Sekine, Hozumi Motohashi
掲載誌:Nature Communications
掲載日:November 20, 2020
DOI:10.1038/s41467-020-19593-0

用語説明

*1. 転写因子:DNA上の特定の配列を認識して結合し、遺伝子の転写を促進するタンパク質。
*2. がん幹細胞性:腫瘍組織を構成するがん細胞のうち、腫瘍を再生する能力を持つ細胞のことを、がん幹細胞と呼ぶ。がん幹細胞は、強い薬剤耐性と自己複製能を持ち、再発や転移の原因とされている。がん幹細胞性とは、このようながん幹細胞としての性質のこと。
*3. NOTCH3:細胞膜に存在する受容体型タンパク質で、リガンドの刺激を受けると細胞内ドメインが切断されて核に移行し、標的となる遺伝子群を活性化する。肺がんのがん幹細胞性の維持に貢献するという報告がある。

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