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2020.11.12

ヒトリンパ芽球様細胞株で発現する遺伝子の精確な転写産物アイソフォーム情報を公開しました

この度、ToMMoではヒトリンパ芽球様細胞株(LCL; Lymphoblastoid Cell line)で発現する遺伝子の正確な転写産物アイソフォームとその発現レベルを解析するため、長鎖リードシークエンサーによる全長トランスクリプトーム解析、Isoform-Sequencing(Iso-Seq)を行い、その結果を日本人多層オミックス参照パネルjMorpに追加しました。

ToMMoでは、収集した血液検体からLCLを樹立し、薬剤応答性などの機能解析への活用を目的にバンキングおよび分譲による利活用を進めています。例えば、LCLを用いることで、ヒトそれぞれが持つ疾患感受性や環境応答能(例えば酸化ストレス応答)を細胞レベルで評価することが可能になります。
LCLにおいてどのような遺伝子転写産物アイソフォームが発現しているかという情報は、同細胞株を用いた機能解析を行う上で重要な情報となります。このたび、通常培養条件に加え、親電子性試薬(ジエチルマレイン酸:DEM)を作用させることで酸化ストレス状態を誘導し、その際に遺伝子発現がどのように変化するかを評価し、その情報を公開いたしました。解析に使用したのは、一度に10,000塩基程度のリード長を読み取ることができる技術である長鎖リード型シークエンサーです。これにより1本のリードで転写産物全体を網羅することができるため、転写産物アイソフォーム*毎の発現量を精確に評価することが可能となりました。本データの公開は、ToMMoバイオバンクをはじめ、世界各地で細胞リソースとして活用されているLCLを用いた機能解析研究に貢献することが期待されます。

今回公開されたデータの作成は、一部、AMEDゲノム医療実現推進プラットフォーム事業(先端ゲノム研究開発)の平成28年度採択課題『多因子疾患の個別化予防・医療を実現するための公開統合ゲノム情報基盤の構築』の支援を受けて行われました。

 

* 転写産物アイソフォーム
一つの遺伝子から発現する複数種類の転写産物。遺伝子毎の発現量のみならず、転写産物アイソフォーム毎の発現量を正確に見積もることで、その細胞・環境において真に機能しているアイソフォームを同定することが可能になることが期待されます。

 

公開対象

・LCLにおける長鎖リード・トランスクリプトーム解析データ
 ※転写産物アイソフォーム毎の発現量統計値(平均値・標準偏差):本解析で新たに見つかった転写産物アイソフォーム(解析した検体間で再現性があったものに限定)を含む。
・jMorpウェブサイト上のゲノムブラウザを介しての閲覧とダウンロードがこちらから利用可能です。

概要

• PacBio RSII を用いたトランスクリプトーム解析
• 日本人基準ゲノム構築に用いられた健常人3名の血液試料から樹立されたLCLを使用
• それぞれのLCLにおいて、酸化ストレス誘導時、非誘導時における遺伝子発現を解析

 

関連リンク

長鎖リードシークエンサーを用いた遺伝子発現解析に関する論文を発表しました