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2020.07.28

抗がん剤の副作用発現に関連する薬物代謝酵素遺伝子多型に関する総説論文がJournal of Clinical Medicine誌に掲載

東北大学大学院薬学研究科生活習慣病治療薬学分野の平塚真弘准教授(東北メディカル・メガバンク機構、未来型医療創成センター、東北大学病院兼任)と東北大学未来型医療創成センター(INGEM)の菱沼英史助教(東北メディカル・メガバンク機構兼任)のグループによる、5-フルオロウラシル(5-FU)系抗がん剤の薬物代謝酵素の遺伝子多型に伴う酵素機能解析に関する総説論文がJournal of Clinical Medicine誌に掲載されました。

5-FU系抗がん剤は様々な固形がんの治療に使われますが、投与患者の約30%に重篤な副作用が発現すると報告されています。その主な要因として薬物代謝酵素の遺伝子多型があり、酵素タンパク質の機能低下を誘引する遺伝子多型を有する場合、重篤な副作用が発現する可能性が極めて高くなります。したがって、5-FU系抗がん剤による薬物療法を実施する際には、重篤な副作用発現を回避する目的で、薬物代謝酵素の遺伝子多型により酵素機能がどの程度変化するのかを推測することが非常に重要です。
5-FU系抗がん剤の代謝に関わる酵素の遺伝的機能変化を評価する手法の1つとして、遺伝子組換え酵素を用いたバリアント酵素のin vitro解析があります。本総説論文では、5-FU系抗がん剤を解毒する3つの代謝酵素(ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピリミジナーゼ及びβ-ウレイドプロピオナーゼ)の遺伝子多型バリアントの機能変化について、現在までに得られている知見を体系的に整理しました。特に、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼは、欧米人において遺伝子多型情報に基づく最適投与量のガイドライン設定が進んでいますが、ジヒドロピリミジナーゼ及びβ-ウレイドプロピオナーゼについては未だに整備されていないのが現状です。近年、遺伝子多型バリアント酵素のin vitro解析の結果をスコア化して、生体内での酵素活性を予測する研究も進んでおり、本論文が将来的に5-FU系抗がん剤の最適投与量ガイドライン設定の基礎データとなることが期待されます。
本論文は、2020年7月22日にJournal of Clinical Medicine誌の電子版に掲載されました。

書誌情報

タイトル:In Vitro Assessment of Fluoropyrimidine-Metabolizing Enzymes: Dihydropyrimidine Dehydrogenase, Dihydropyrimidinase, and β-Ureidopropionase
著者名:Eiji Hishinuma, Evelyn Gutiérrez Rico, Masahiro Hiratsuka
掲載誌:Journal of Clinical Medicine
掲載日: July 22, 2020
DOI: 10.3390/jcm9082342