未知のなかば
さんぽ未知
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第5回 DNAから古代がわかる
DNA分析は医療に利用されるだけではありません。あらゆる動植物の体に含まれているDNAは、動植物の種類を調べることができる物質です。そのために考古学や歴史学でDNA分析が使われています。
考古学にDNA分析が特に向いている理由は、DNAの丈夫さです。ミイラや化石の中にも、DNAは残っています。さらに動植物そのものではなく、加工した物、たとえば毛織物や木工品にだってDNAは含まれているのです。だから昔の人がどんな動植物から身の回りの道具を作っていたのかを、DNAから調べることができます。
そしてDNA分析が大きな力を発揮するのは、遺跡に残されたものを調べる時です。出土した家畜の骨や、水田跡の種籾、それに花粉の中にはDNAが含まれています。それを手がかりにして、麦や稲といった穀物や鶏のような家畜が、元々はどこの土地にルーツがある生き物で、いつの時代にどんなルートを通って別の地へ移動していったのかを考えることができます。
いまや考古学で、DNA分析は欠かせないツールになっています。最先端の科学技術が、古代の謎を解く手がかりになるのです。