未知のなかば 道なき未知

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第2回 タンパク質を調べて予防や診断に

ToMMoがバイオバンクを作る目的は新しい医療の開発ですが、その一つがタンパク質の研究です。生き物の体で働くさまざまな分子の中でも血液の中のタンパク質は、予防法や治療法の開発の糸口になると考えられています。

タンパク質は多くの種類があり、それぞれが異なる働きをしています。このことは医療に応用され、おおいに役立てられてきました。例えば健康診断では、血液を採ってGOTやGPT、γ-GTPなどのタンパク質の値を測ります。肝臓がダメージを受けている時にはこれらの値が変動するので、診断の参考になるからです。この他にも血液の中には、病状の進み方や、病気にかかる前の段階で増減するタンパク質があり、健康状態の検査に利用されてきました。しかしどのタンパク質がどんな時にどう増減するのか、わかっていることは限られており、現在知られている他にも、検査に使えるタンパク質があると考えられています。

今、検査に使える新たなタンパク質を探し出す挑戦が、世界中で行われています。その中でToMMoのアプローチは、何万人もの健康な方の血液からタンパク質を分析して、コホート調査で調べる何年間もの健康状態や、DNA配列と結びつけて考える方法です。分析には質量分析計を使います。血液の中に存在するタンパク質の種類はたくさんあるのですが、それがどの種類のものなのかを質量分析計で洗い出すのです。ToMMoのスタッフが開発した方法ですと、1回質量分析計にかけるだけで、600種類以上のタンパク質の種類がわかり、それぞれのタンパク質の量がどれだけあるのかも測れます。たくさんの人からデータを集めて分析すれば、病気の診断に利用できるタンパク質が見つかるかもしれません。そして病気の前兆に応じて量や濃度が変化するようなタンパク質を見つけることができたら、その症状が出る前に予防できる時代が来るでしょう。コホート調査のデータが合わさることによって、とくに心筋梗塞や脳卒中、がんの予防や早期診断の検査に使えるタンパク質が探しやすくなると考えています。これらの病気が疑われる状態、予防の必要がある状態を、タンパク質の量や濃度を目安にして診断できるとしたら、早期発見や予防がしやすくなって、重症になる前に防げるかもしれません。

そんな未来を引き寄せるために、ToMMoはタンパク質の分析を始めています。タンパク質の他にも低分子化合物などさまざまな物質も血液から調べるのですが、それはまた別の機会にお話しましょう。

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バイオバンクでは血液を処理して成分を分ける。ToMMoが調べるのは、この黄色い上澄みの部分(血漿)にあるタンパク質

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これが質量分析計。タンパク質の断片を含む溶液に約二千ボルトの電圧をかけて、スプレー状に吹き出してデータを取り、断片の分子量を出す。一回の測定で600種類以上のタンパク質の種類と量がわかる優れものだ

(担当:影山麻衣子)

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