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2023.01.13

脂質関連遺伝子が様々な疾患発症リスクに与える影響を検証した国際共同研究が論文として発表されました

ゲノム解析部門の成田 暁助教、高山 順准教授、田宮 元教授、山本 雅之教授らが参画する国際研究から論文成果が発表されました。

Global Lipids Genetics Consortium(GLGC)は、東北大学東北メディカル・メガバンク機構を含む世界各国のバイオバンク・ゲノムコホートの大規模データを対象に、脂質関連5項目のメタGWAS(ゲノムワイド関連解析)を実施しています(Graham SE et al. 2021)。
今回の研究では、上記のメタGWASで有意な関連を示した1,750のゲノム多型の結果をもとに、6つの手法を用いて、生物学的に脂質レベルに影響を及ぼす遺伝子の同定を試みました。
その結果、染色体上の位置や機能、遺伝子発現量などのデータを組み合わせることで、脂質レベルと生物学的に関連する遺伝子を集中的に同定できることが示されました。
また、血中脂質レベルは、心血管疾患と強く関連するとされていますが、PheWAS※1と呼ばれる解析を実施したところ、脂質レベルと有意に関連するゲノム多型が、胆石症など、心血管疾患以外の様々な疾患・形質とも関連する、すなわち多面作用※2をもたらすことも示されました。
さらに、データセットを男性と女性に層別してメタGWASを実施した結果、脂質関連遺伝子領域のうち、3-5%において、その効果に性差が見られること、また性染色体であるX染色体においても21の新規関連遺伝子が同定されたことから、脂質レベルには性ホルモンなどの影響も関与していることが示唆されました。

本研究の結果は、脂質レベルと関連するゲノム多型が、心血管疾患をはじめとする様々な疾患・形質に影響を及ぼすメカニズムを詳細に知る上での手がかりとなるものと考えられます。

なお、GLGCでは、メタGWASの要約統計量を、遺伝子発現量や転写因子などのデータと組み合わせた統合解析を実施し、関係する遺伝子群が脂質レベルに影響を及ぼすメカニズムも明らかにしています(Ramdas S et al. 2022)。

※1 PheWAS(フェノムワイド関連解析)
GWAS(ゲノムワイド関連解析)が、特定の疾患・形質に着目し、ゲノム全体に
分布する多数の多型との統計学的関連を網羅的に評価するのに対して、PheWAS
は特定のゲノム多型に着目し、多数の疾患・形質との統計学的関連を網羅的に
評価する手法である。

※2 多面作用
一つの遺伝子・バリアントが複数の形質・表現型に影響を及ぼすこと

書誌情報

タイトル:Implicating genes, pleiotropy, and sexual dimorphism at blood lipid loci through multi-ancestry meta-analysis
著者:Stavroula Kanoni, Sarah E. Graham, Yuxuan Wang, Ida Surakka,et.al(当機構からの共著者:Akira Narita, Jun Takayama, Gen Tamiya, Masayuki Yamamoto)
掲載誌:Genome Biology
掲載日:2022年12月27日
DOI:10.1186/s13059-022-02837-1

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