疾患発症リスク予測手法の開発

個別化医療・個別化予防の実現のためには、遺伝要因と生活習慣(環境要因)がそれぞれどの程度実際に疾患の発症に影響を与え、またどのくらいの確率で病気を発症する可能性があるのか、という精度の高い予測(疾患発症リスク)が必要となります。世界中で、多くの研究グループがリスクの予測に挑んでおり、いくつかの疾患でモデルが構築されつつあるなど成果が出始めていますが、まだこれから研究開発が進んでいく研究領域です。
当計画では特に、被災地での増加・深刻化が懸念されている高血圧、アトピー性皮膚炎、脳梗塞等多くの国民が罹患する一般的な病気に関する疾患リスク予測手法の開発に取り組んでいます。特に、前向きに取得された環境データを利用することで、網羅的な遺伝子・環境相互作用解析を行い、これまで考慮できなかった相互作用成分を取り込んだリスク予測モデルの構築を計画しています。従来のゲノム多型のみならず、次世代シークエンス解析によるレアバリアント、環境要因、遺伝子・環境相互作用を丁寧にリスク予測モデルに取り込んでいこうとしています。

疾患発症リスク予測における成果

当計画では、スパースモデリング手法(STMGP; smooth-threshold multivariate genetic prediction)を新たに開発し、その手法によるリスク予測が高精度かつ高速であることを示しています。この手法により、米国のアルツハイマー病患者全ゲノムシークエンシングデータから疾患発症リスクを予測したところ、本手法が既存の手法よりも、最高で3倍程度の高い性能を持つことがわかりました。今後のゲノム医学研究で、重要な手法となることが期待されています。また、この手法を応用して他の疾患の発症リスク予測を行った研究成果もあげつつあるなど、ToMMoでは高精度のリスク予測を行う方法についても研究を進めており、引き続き疾患発症のリスク予測の開発に努めていきます。

関連プレスリリース

これらを通じて、コホート調査により得られる生活習慣や環境因子のデータと、ゲノム解析、オミックス解析によって得られたデータが集積・統合され、生活習慣病を含めた精緻な多因子疾患の発症リスク予測手法が開発されています。遺伝情報回付に向けた取組と遺伝的リスク予測手法の開発を通じて、多因子疾患の遺伝情報回付に向けた基盤を作り上げています。