ToMMo10年の成果(2012年2月~2021年3月)

※2021年4月1日時点の情報です。

1.長期健康調査

2013年5月より地域住民コホート調査を、同年7月より三世代コホート調査を開始しました(コホート調査の概要)。 二つの調査を合わせて15万人の参加があり、うち宮城県の12万人がToMMoのリクルートによるものでした。このうち2.5万人は地域支援センターにて詳細調査を実施、また1.2万人はMRI撮像を含む脳と心の健康調査を実施しました。さらに郵送・ウェブによるアンケート調査や詳細二次調査などにより健康状態の追跡調査を行っています。検査結果は参加者本人に回付され、さらに宮城県各地で結果報告会および事業報告会を実施しました。急ぎの対応が必要と考えられる検査結果の場合には、緊急結果回付もしくは臨床心理士による対応を実施しました。また、三世代コホート調査の一環として小中学生を対象に地域子ども長期健康調査を実施しました。
コホート調査の仕組みを活用したアドオンコホートについても多数の申し入れがあり、計8件が実施されました。
一般住民に対する長期間にわたるゲノムコホート調査を実施するにあたり、倫理面での課題について慎重に議論しました(詳細)。対象者に調査を正しく理解していただくため、専門職であるゲノム・メディカルリサーチコーディネーター(GMRC)の人材育成を行いました。また、遺伝情報をもとにした個別化ヘルスケアの実現のため、調査参加者の一部に対して遺伝情報回付のパイロット調査を実施しました。

2.地域医療支援

2012年10月、東北大学病院および医学系研究科と共同で、地域医療支援にあたる医師を組織的に育成・循環する「循環型医師支援システム」を構築しました。2021年3月までにのべ181名の医師を太平洋沿岸を中心とした県内の医療機関に派遣しました(詳細)。

3.バイオバンクの構築

長期健康調査で収集された生体試料については、搬送、保管、出庫などの手順を確立し数百万本のサンプルのバイオバンク化を実現しました。調査票や検査結果については、データクリーニング手法を確立しデータの品質を確保したうえで、また、試料の一部を用いて実施したゲノムやオミックスの解析結果についても、匿名化のうえ高度なセキュリティで守られたスーパーコンピュータ内のデータベースに保管しました。
このように、生体試料、コホート調査情報、解析情報を併せ持つ世界有数の複合バイオバンクを構築しました。この試料・情報を全国の研究者が利用できるようにした仕組みが分譲です。分譲を実施するにあたり、目的の試料を間違いなく出庫できるようにするシステム、データを統合データベースdbTMMとしてデータベース化、審査や契約を含む申請手続きの手順の確立、などを実施しました。こういった仕組みと運用実績が認められ国際標準化機構(ISO)の認証を取得しました。
また、他機関の疾患コホートなどのバイオバンクと横断的に検索できるようにしました(詳細)。

4.基盤解析

バイオバンクに格納された生体試料から、さまざまな解析を行い研究基盤として整備しています。
ゲノム解析については、8,300人の短鎖リード全ゲノム解析による日本人のゲノムのバリエーションと頻度をカタログ化した「日本人全ゲノムリファレンスパネル(8.3KJPN)」を、長鎖リード全ゲノム解析による日本人のゲノム解析の精度を上げる「日本人基準ゲノム配列(JG2)」を構築しました。また、約15万人分のSNPアレイ解析と遺伝子型インピュテーションによる擬似全ゲノム推定を完了しています。さらに、全ゲノム解析結果をもとにSNPアレイ「ジャポニカアレイ®」を設計し、その後バージョンアップを重ねています。
そのほか、メタボローム解析、プロテオーム解析、トランスクリプトーム解析、メタゲノム解析、および主にIMMによるメチローム解析を実施しており、その解析結果は多くの研究者に利用されています。
また、より多くの研究者がこういった解析結果を利用できるよう、jMorp(日本人多層オミックス参照パネル)として公開するとともに、ゲノムプラットフォーム連携センターGWASセンターを設立し、データシェアリングを行うことで我が国のゲノム医療の推進に貢献しています。

5. 未来型医療実現のための基盤構築

2012年2月から2021年3月にかけては主に、健康調査による試料・情報の収集、これを用いた複合バイオバンクの構築を実施してきました。こういった試料・情報、そして基盤が多数の大学、研究所、企業などから注目されるようになり、共同研究につながりました。今後はこういった連携から次々に成果が生まれてくると考えます。
また、健康状態のリスク予測など新しい研究分野へのアプローチも始まっており、臨床応用、社会実装に直結していくと考えられます。
これまでに実施した、長期健康調査、バイオバンクの構築、基盤解析については引き続き収集、バンキング、解析を継続し、より充実した基盤構築を目指します。

 


詳細二次調査
ベースライン調査(2013年から2015年にかけて実施したリクルート時の調査)から概ね 4 年経過時点で行われた2回目の詳細調査。2017年から2021年にかけて実施し約8万人の参加を得た。同一集団に対して複数回、同内容の検査を実施することにより、調査参加者の経時変化を幅広い観点で測定することができる。