循環型医師支援システム(2012年10月~2021年3月)

ToMMoは東日本大震災の被害が大きかった太平洋沿岸地域を中心に、地域医療支援を行ってきました。中でも代表的な取組が、2012年度から2020年度まで運用された循環型医師支援システムです。このシステムは、ToMMoと東北大学病院、医学系研究科が構築し、東北大学病院 地域医療復興センターで統括して運用してきました。ToMMoに所属する若手医師は循環型医師支援システムの中でToMMoクリニカル・フェロー(TCF)として、地域医療を行う時期と大学で最先端のゲノム医療などに関する研究に取り組む時期を順番に経験し、キャリアを形成しました。2020年度までに延べ181名の医師が主に13の医療機関に赴任し、内科、外科などのポストを支援しました。2021年4月以降は、宮城県の協力のもと東北大学病院が運用を行っています。

地域の医療現場で活躍するToMMoクリニカル・フェロー(TCF)撮影 千葉健一

これまでに支援した医療機関は以下の通りです。(2012年10月~2021年3月)
気仙沼市立病院 
気仙沼市立本吉病院 
南三陸病院
・ 公立志津川診療所(2015年 南三陸病院の開院に伴い閉鎖)
・ 公立志津川病院(2015年 南三陸病院の開院に伴い閉鎖)
登米市民病院
・ 宮城県立循環器・呼吸器病センター(平成31年に閉院)
美里町立南郷病院
石巻赤十字病院
女川町地域医療センター
みやぎ県南中核病院
公立刈田綜合病院

TCFが大学で実施した研究は、ToMMoや東北大学のリソースを利用したゲノム医療等に関するものもありますが、支援先の医療機関での症例をもとにしたものもあります。下記はその一例です。
「歯周炎関連の敗血症性肺塞栓の症例」についての論文が BMC Infectious Diseases誌 に掲載されました

また「ToMMoクリニカル・フェロー連絡会」として、TCFからは支援報告を、ToMMoの研究者からは最新の研究動向をお互いに情報交換する会議を、計87回実施しました。

ToMMoクリニカル・フェロー連絡会のようす

ToMMoクリニカル・フェロー経験者からひとこと

私は、2016年10月から4カ月間、TCFとして気仙沼市立病院と女川町地域医療センターに勤務しました。週の前半は気仙沼、後半は女川という勤務体制でした。気仙沼市と女川町は津波による甚大な被害を受けた地域で、その時期は震災から5年が経過した復興期の光景がいたるところで見られました。震災直後は短期的な医療支援が全国から集まりますが、震災後の生活環境の変化が疾病という形で現れてくるのは数年後が多いため、中長期的にはその地域を担う医師が医療支援を継続する重要性を実感しました。TCFの一員として、震災の被害が大きかった地域の医療支援に関わることができたのは、外科医としても貴重な経験となりました。(濱中洋平講師)