お知らせ
- 2025.04.16
母乳中の脂質成分と児の肥満リスクの関連に関する論文が掲載
東北メディカル・メガバンク計画三世代コホート調査参加者を対象に、母乳中の脂質成分の濃度と、将来の児の肥満リスクとの関連を評価した結果、特定の脂質が児の肥満リスクと関連する可能性が示されました。本研究成果は、国際栄養学雑誌『Nutrition』に掲載されました。
乳幼児期のBMIの推移が5歳より前に増加に転じること(=早期Adiposity Rebound; AR)が、成長後の肥満や生活習慣病のリスクを高めることが知られています。母乳中の脂質成分が児の体組成や将来の肥満に関連する可能性が示唆されていますが、ARとの関連を調べた研究はこれまでありませんでした。本研究では、日本人における母乳中の脂質成分を網羅的に測定し、児の早期AR発生との関連を評価しました。
三世代コホート調査に参加した母子のうち、5歳前にARが確認された児とその母親93組(=早期AR群)および5歳までARが確認されなかった児とその母親91組(=対照群)を対象にしました。母乳は産後1カ月時に採取され、脂質成分を網羅的に測定しました。その後、各脂質成分の濃度、および共通の化学構造を持つ脂質成分の濃度の合計値を算出し、早期AR群と対照群で比較しました。また、児の早期AR発生と脂質成分の関連を多変量解析で評価しました。
その結果、早期ARの発生に対して、母乳中のコレステロールエステル濃度が逆の関連を、fatty acid-hydroxy-fatty acid(FAHFA)の濃度が正の関連を、それぞれ示しました。
本研究により、母乳中の脂質成分が早期ARの発生や成長後の肥満・生活習慣病リスクに関与する可能性が示唆されました。この知見は、乳幼児の健やかな成長と将来の健康維持に貢献するものと期待されます。
※なお、同対象で母乳中ヒトミルクオリゴ糖との関連を評価した論文が国際栄養学雑誌Journal of Nutritionに掲載されています。詳しくはこちら。
※本研究は江崎グリコ株式会社との共同研究による成果です。
書誌情報
タイトル:Exploring the association between human breast milk lipids and early adiposity rebound in children: a case-control study
著者名:Kento Sawane, Ippei Takahashi, Mami Ishikuro, Hiroko Takumi, Masatsugu Orui, Aoi Noda, Genki Shinoda, Hisashi Ohseto, Tomomi Onuma, Fumihiko Ueno, Keiko Murakami, Naoko Higuchi, Takashi Furuyashiki, Tomohiro Nakamura, Seizo Koshiba, Kinuko Ohneda, Kazuki Kumada, Soichi Ogishima, Atsushi Hozawa, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama and Taku Obara
掲載誌:Nutrition
掲載日:2025年3月8日
DOI:10.1016/j.nut.2025.112739