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2016.11.08

遺伝情報の結果の返却に関する論文を発表しました

解析した遺伝情報を参加者の皆さまにお伝えする(遺伝情報の回付を行う)のは、日本の大規模なコホート調査では例がなく、東北メディカル・メガバンク計画が今年11月にスタートしたパイロット研究(家族性高コレステロール血症を対象疾患とする)が初の試みです。
本パイロット研究実施にあたって関連する日本の諸制度の状況や諸外国の実情などを綿密に調査してきましたが、その結果のうちの一部を、人材育成部門の相澤弥生助手小林朋子助教川目裕教授により、論文「網羅的ゲノム解析における偶発的所見を含む遺伝情報の結果の返却に関する我が国の現状と課題の検討―米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の偶発的所見取り扱いに関する推奨からの考察―」として日本遺伝カウンセリング学会誌に発表しました。本論文では、ACMGが2013年に返却すべき偶発的所見の最小限のリストとして発表した24疾患について日本の医療の状況等についてまとめ、遺伝学的検査の結果返却に関して検討すべき課題点について考察しています。

【論文概要】
ゲノムを網羅的に解析する技術が登場したことにより、解析の目的以外の結果(偶発的所見)も分かる可能性があり、その取り扱いについて世界中で議論が行われています。2013年には、米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)が臨床における網羅的ゲノム解析の偶発的所見の取り扱いについて推奨を発表しました。これは、病気の診断のために行われた遺伝学的検査で偶発的所見(ACMGでは24疾患56遺伝子のリストを示しています)が見つかった場合には、その結果を主治医へ返却すべきであるというものです。そこで、この24疾患について病気の概要や日本の医療の状況についてまとめた上で、結果返却に関して検討すべき課題点について考察しました。日本における医療体制や国民の文化・風土、結果返却を受けた人にどのような心理社会的影響があるかを考慮した上で、今後も検討を進めていく必要があります。

【書誌情報】
網羅的ゲノム解析における偶発的所見を含む遺伝情報の結果の返却に関する我が国の現状と課題の検討―米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の偶発的所見取り扱いに関する推奨からの考察―
Review of present state and challenges regarding return of genomic results from genome-wide analysis in Japan: Consideration of American College of Medical Genetics and Genomics (ACMG) recommendation for reporting incidental findings
日本遺伝カウンセリング学会誌 37(3): 105-126 2016

関連リンク

ACMG Recommendations for Reporting of Incidental Findings in Clinical Exome and Genome Sequencing