お知らせ
- 2026.07.01
拡張型心筋症の新たな遺伝子バリアントに関する論文が掲載
拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy;DCM)は、心臓が拡大し、血液を全身に送り出す力が弱くなる疾患です。進行すると心不全や突然死に至ることがあり、心臓移植の適応疾患の一つとなっています。遺伝的要因が関与することが知られていますが、DNAの塩基配列に基づく解析のみで原因を特定できるのは約半数であり、原因遺伝子不明のDCMは予後や重症度が予測できないため、治療や管理が難しいという課題がありました。
本研究では、DCMの患者さんから心臓移植または補助人工心臓装着時に心臓組織を提供していただき、遺伝子の働きを調べるRNA-seqという手法から得た情報とゲノム情報とを合わせることにより、SGCB遺伝子のバリアントが病因であることを見出しました。SGCB遺伝子はβサルコグリカンという心筋細胞や骨格SGCB遺伝子の筋細胞の細胞膜に存在するタンパク質の一つで、このバリアントを保有しているとタンパク質の構造が不安定になり機能が失われます。SGCB遺伝子は、筋ジストロフィーという別の疾患の関連遺伝子として知られていましたが、このバリアントを保有するDCMの患者さんには筋力の低下は見られませんでした。また、このバリアントは日本人をはじめとする東アジア人集団に比較的高頻度で見られるバリアントで、両方のアレルにこのバリアントを保有する場合にのみDCMを発症し、片方のアレルのみにこのバリアントを持つ人には心筋症発症リスクの上昇は見られませんでした。
本研究は、東アジア人におけるDCMの遺伝子診断精度の向上に貢献する可能性があります。また、片アレルのみにこのバリアントがあっても発症に至らないことから、SGCB遺伝子の機能を部分的に回復させる治療が有効である可能性が示されました。
本研究は、国立循環器病研究センター、大阪大学、京都大学iPS細胞研究所などと共同で行われ、成果はJournal of Clinical Investigation誌に掲載されました。
書誌情報
タイトル:Homozygous SGCB splice-site variant causes isolated dilated cardiomyopathy through sarcoglycan complex destabilization in East Asians.
著者名:Li F, Shinomiya H, Kuramoto Y, Kanaoka K, Sakahashi Y, Ishihara Y, Kioka H, Ide S, Yamaguchi-Kabata Y, Tadaka S, Motoike IN, Kinoshita K, Ohneda K, Sakurai H, Okumura T, Miyashita Y, Jojima K, Kato H, Matsuoka K, Tanabe K, Nishimura S, Takashima S, Asano Y, Sakata Y.
掲載誌:J Clin Invest.
掲載日:2026年6月1日
doi: 10.1172/JCI198675.