お知らせ
- 2025.06.18
幼児期におけるコミュニケーションの困難さと視線パターンの関連についての論文が掲載
幼児期におけるコミュニケーションの困難さと視線パターンの関連についての論文が、この度、国際科学誌The Tohoku Journal of Experimental Medicineに掲載されました。
視線パターンは、認知機能や精神状態、発達特性と密接に関連することが報告されており、客観的なバイオマーカーとして、医療分野での応用が期待されています。小児領域においては、自閉スペクトラム症への臨床応用が注目されておりますが、自閉スペクトラム症の多様な特性のため、特定の視線パターンと自閉スペクトラム症特性との明確な関連性はまだ十分に解明されていません。
本研究では、自閉症スペクトラム指数・日本語版 児童用から抽出される「社会的スキル」、「注意の切り替え」、「コミュニケーション」、「想像力」の各特性について、これらが臨床的障害域にあるか否かを評価しました。東北メディカル・メガバンク計画 三世代コホート調査に参加した2,708名のお子さんを対象に、各自閉スペクトラム症特性の臨床的障害域の有無と視線計測装置「Gazefinder®」で取得した定量的な視線パタ-ンとの関連を、重回帰分析にて解析しました。その結果、「コミュニケーションの困難さ」は、検査画面全体の注視割合や人物と幾何学模様が提示される画像で人物を注視する割合と負の関連があることが示されました。すなわち、コミュニケーションの困難さを有する児では、画面全体や人物への注視が少なくなる傾向が見られました。また、幾何学模様を注視する割合は、「社会的スキルの不足」と正の関連があり、「想像力の困難さ」とは負の関連があることが示されました。
本研究により、Gazefinder®で測定される特定の視線パターンが、コミュニケーションの困難さ、社会的スキルの不足、想像力の困難さといった自閉スペクトラム症の具体的な特性と関連することが明らかになりました。視線パターンが、多様性のある自閉スペクトラム症の一側面を反映する可能性を示唆するものです。今後、Gazefinder®は、自閉スペクトラム症のより精密な再分類、重症度判定、さらには治療効果のモニタリングといった層別化医療への応用が期待されます。
書誌情報
タイトル:Gaze patterns of children with communication difficulties associated with core symptoms of autism spectrum disorder
著者名: Mika Kobayashi, Tomoko Kobayashi, Taku Obara , Akira Narita, Akimitsu Miyake, Tomohisa Suzuki, Mami Ishikuro, Masatsugu Orui, Eiichi N. Kodama, Ritsuko Shimizu, Yohei Hamanaka, Yoko Izumi, Atsushi Hozawa, Nobuo Fuse, Atsuo Kikuchi, Gen Tamiya, Shigeo Kure, Shinichi Kuriyama, and Masayuki Yamamoto
掲載誌:The Tohoku Journal of Experimental Medicine
掲載日:2025年6月12日
DOI:https://doi.org/10.1620/tjem.2025.J074