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2025.05.15

3万人の目を検査してわかった、眼圧と遺伝子の意外な関係 緑内障リスクを遺伝子で予測する時代が来る?

日本人の目の健康に関わる遺伝子が明らかに――。ToMMoによる最新の研究で、眼圧(目の中の圧力)に影響する遺伝子が多数見つかりました。緑内障の早期発見や予防にもつながるかもしれない、注目の成果とは?

なぜ「眼圧」と「遺伝子」に注目したか?

眼圧は特に緑内障などの重大な目の病気と関係しています。眼圧値は、遺伝的な要因があるとはわかっていましたが、日本人特有の傾向は未解明でした。この研究は、眼圧と遺伝子の関係を一般住民で大規模に調べた初めての試みです。

2つの大規模コホートを分析

宮城県住民を対象とした「地域住民コホート」(2万人以上)と「三世代コホート」(1万人以上)の2つの大規模コホート(のべ3万人以上)のデータを用いました。調査票、目の検査などを実施し、遺伝子との関連性を調べました。

眼圧に関係する遺伝子が21カ所!そのうち4つは世界初の発見

合計1,601個の「眼圧に関係する遺伝子多型SNP(遺伝子の個人差)」を発見し、21の遺伝子領域が眼圧と統計学的に有意に関連していることを明らかにしました。そのうちSEPT8、ALDH2、COL6A2、WNT7Bという遺伝子は、これまで報告されていなかった世界初の報告です。特に、ALDH2遺伝子は飲酒時に生成されるアセトアルデヒドを分解する酵素で、遺伝子多型によって、お酒に強いか弱いかが異なります。また、欧米人と異なり、年齢とともに眼圧が下がる傾向も確認されました。

緑内障のリスクを“遺伝子から予測”できる未来へ

緑内障は失明原因の上位であり、早期発見が大切です。今回の研究で、日本人に特有の遺伝的特徴が見えてきました。将来は個人の遺伝情報をもとに、目の病気の予防や診断ができるようになる可能性、遺伝的リスクがわかれば、「まだ症状が出ていない人」も予防できる可能性があります。高齢化社会での目の健康維持にも貢献できます。

今後の展望

目の健康を守る新しいアプローチが、すでに始まっています。緑内障そのものとの関連解明へ発展でき、将来的な、遺伝情報に基づいた「個別化医療」への基盤となります。

書誌情報

タイトル: Genome-wide association study of intraocular pressure in population-based cohorts in Japan: The ToMMo Eye Study
著者名: Nobuo Fuse, Hayato Anzawa, Miyuki Sakurai, Ikuko N. Motoike, Satoshi Nagaie, Tomohiro Nakamura, Akiko Miyazawa, Eiichi N. Kodama, Masatsugu Orui, Yohei Hamanaka, Tomoko Kobayashi, Akira Uruno, Makiko Taira, Ritsuko Shimizu, Naoki Nakaya, Mami Ishikuro, Taku Obara, Fuji Nagami, Soichi Ogishima, Fumiki Katsuoka, Kazuki Kumada, Shinichi Kuriyama, Atsushi Hozawa, Yoko Izumi, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto
掲載誌: Ophthalmology Science
早期公開日: 2025年5月6日
DOI: 10.1016/j.xops.2025.100821