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2025.02.04

妊娠前半期の母体空腹時血糖値と子どもの発達特性との関連に関する論文が掲載

三世代コホート調査をもとにした妊娠前半期の母体空腹時血糖値と子どもの発達特性との関連に関する論文が国際科学誌The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism誌に掲載されました。

発達遅延は言語、社会的行動、生活に必要な能力が生活年齢から予想される平均的な状態よりも遅れていることを指します。これまで妊婦の糖尿病または妊娠糖尿病は子どもの発達遅延のリスクを高めると報告されていましたが、妊娠前半期(妊娠24週未満)の空腹時高血糖や低血糖の児の発達遅延への関連は検討されていませんでした。本研究では妊娠前半期の空腹時血糖値とお子さんの発達遅延との関連について検討しました。

本研究では、三世代コホート調査に参加いただいている1,541組の妊婦さんとその妊婦さんから生まれた2歳時点のお子さんを調査対象としました。母体空腹時血糖値は連続変数(mg/dL)とカテゴリ変数(70mg/dL以下、71-94mg/dL、95mg/dL以上)で抽出し、お子さんの発達遅延の評価は5つの発達領域を測定できる尺度Ages & Stages Questionnaire, third edition (ASQ-3)を用いました。5つの発達領域のうち、どれか一つの領域で発達遅延ありと評価された場合、「いずれかの領域での発達遅延あり」と定義しました。妊娠前BMIや妊婦さんのご両親の糖尿病または妊娠糖尿病既往歴、妊婦さんの出産歴等を補正項目として多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、妊娠前半期の空腹時血糖値が70mg/dL以下の群でお子さんの発達遅延リスクが低いという関連がみられました。一方で、妊娠前半期の空腹時血糖値を連続変数で検討した場合と空腹時血糖値が95mg/dL以上の群では妊娠前半期の空腹時血糖値とお子さんの発達遅延リスクとの間に関連はみられませんでした。

本研究は妊娠前半期の空腹時血糖値と子どもの発達遅延との関連を検討した初めての研究です。妊娠前半期の空腹時血糖高値がお子さんの発達遅延のリスクを高める関連はみられませんでした。一方で、過度な低血糖は母体へのリスクもあるため、妊娠中の70mg/dL以下の血糖値と児の発達遅延との関連については今後も慎重な検討が必要と考えます。

書誌情報

タイトル:Maternal Fasting Plasma Glucose Level in Early Gestation and Developmental Delay in 2-year-old Children
著者名:Chikana Kawaguchi, Mami Ishikuro, Ryota Saito, Keiko Murakami, Aoi Noda, Genki Shinoda, Misato Aizawa, Hisashi Ohseto, Noriyuki Iwama, Masatsugu Orui, Taku Obara, Shinichi Kuriyama
掲載誌:The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism
掲載日:2025年1月20日
DOI:10.1210/clinem/dgae825
※本論文は『東北大学2024年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業』によりOpen Accessとなっています。