お知らせ
重症先天性心疾患の一つで主要な原因遺伝子を発見 日本人総動脈幹症患者の1/4以上を占める遺伝子変異の可能性 【プレスリリース】
発表のポイント
• 日本人において頻度の高い遺伝子変異 (TMEM260 遺伝子 c.1617del) が、重症先天性心疾患の一つである総動脈幹症の主要原因であることを発見しました。
• この遺伝子変異は日本人総動脈幹症の発症原因として最大、もしくは2番目に大きく、日本人総動脈幹症患者全体の1/4以上を占めると考えられます。
• 本研究成果は、日本人総動脈幹症患者の遺伝学的検査の重要性を示すとともに、臨床的な応用が期待されます。また今後、治療法の開発や重症先天性心疾患の病態解明に寄与する可能性があります。
概要
先天性心疾患は出生児の約1%が罹患し、重症先天性心疾患の場合は児の命に関わります。しかし、その原因の多くは今も不明なままです。
東北大学大学院医学系研究科の菊池 敦生教授、矢尾板 久雄医員、髙山 順准教授、宮城県立こども病院循環器科の川合 英一郎部長らの研究グループは、山形大学との共同研究により、重症先天性心疾患の一つである総動脈幹症の日本人患者集団の遺伝子を解析することで、膜タンパクTMEM260の遺伝子変異 の一つであるc.1617delが、日本人総動脈幹症の新たな主要原因であることを突き止めました。本変異による総動脈幹症は、日本人総動脈幹症患者の1/4以上を占めると考えられます。本成果は、日本人総動脈幹症患者の遺伝学的検査の重要性を示すとともに、治療法開発や病態解明などに寄与することが期待されます。
この遺伝子変異は慶應義塾大学医学部小児科グループでも同時に発見され、TMEM260 Keio-Tohoku variant(慶應―東北バリアント)と名付けられます。
本研究の成果は2024 年2 月13 日付で遺伝学分野の学術誌Journal of Human Geneticsに掲載されました。
書誌情報
タイトル:Genetic etiology of truncus arteriosus excluding 22q11.2 deletion syndrome and identification of c.1617del, a prevalent variant in TMEM260, in the Japanese population
著者:Hisao Yaoita†*, Eiichiro Kawai†, Jun Takayama†, Shinya Iwasawa, Naoya Saijo, Masayuki Abiko, Kouta Suzuki, Masato Kimura, Akira Ozawa, Gen Tamiya, Shigeo Kure, and Atsuo Kikuchi*
†筆頭著者 *責任著者
掲載誌:Journal of Human Genetics
掲載日:2024年2月13日
DOI:10.1038/s10038-024-01223-y