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2023.04.17

母親の社会的孤立と児の行動特性に関する論文がEuropean Child & Adolescent Psychiatry誌に掲載

児が1歳時点で社会的に孤立している母親の児は4歳時点で問題行動の割合が高いことを示した論文がEuropean Child & Adolescent Psychiatry誌に掲載されました。
社会的ネットワーク・社会的サポート等の社会関係と児の行動特性の関連がこれまでの研究で示されてきましたが、児自身や地域の社会関係を検討した研究が主であります。また、育児中の母親の社会的孤立が懸念されていますが、児の行動特性との関連は不明です。そこで、三世代コホート調査の自記式調査票データを用いて、母親の社会的孤立と未就学児の行動特性の関連を検討しました。

Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6)を産後1年時に母親に回答してもらい、総得点30点中12点未満を社会的孤立ありとしました。子どもの行動チェックリスト(Child Behavior Checklist 1½–5)※※を用いて児が4歳時の行動を評価してもらい、全問題尺度と上位尺度(内向尺度、外向尺度)のT得点64点以上を臨床域としました。その結果、産後1年時点で社会的に孤立している母親の割合は、25.4%でした。社会的に孤立している母親の児はそうでない児と比較して、全問題尺度で測定した行動特性が臨床域である割合が1.4倍高いことが分かりました。また、内向尺度、外向尺度でも同様の関連がみられ、各々1.3倍、1.4倍高いことが分かりました。

母親の社会的孤立を早期にスクリーニングし介入につなげることが、児の行動特性に有益である可能性が本研究から示唆されました。

※Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6):ネットワークサイズや接触頻度とともに情緒的・手段的サポートを評価する6項目(家族に関する3項目、友人関係に関する3項目)から成る尺度

※※子どもの行動チェックリスト(Child Behavior Checklist 1½–5):1歳半から5歳の子どもの情緒と行動を保護者が包括的に評価する質問票である。症状群尺度のうち、情緒反応、不安/抑うつ、身体愁訴、引きこもりを内向尺度、注意の問題、攻撃的行動を外向尺度とする。

書誌情報
タイトル:Maternal social isolation and behavioral problems in preschool children: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Keiko Murakami, Mami Ishikuro, Taku Obara, Fumihiko Ueno, Aoi Noda, Tomomi Onuma, Fumiko Matsuzaki, Ippei Takahashi, Saya Kikuchi, Natsuko Kobayashi, Hirotaka Hamada, Noriyuki Iwama, Hirohito Metoki, Masahiro Kikuya, Masatoshi Saito, Junichi Sugawara, Hiroaki Tomita, Nobuo Yaegashi, Shinichi Kuriyama
掲載誌:European Child & Adolescent Psychiatry
早期公開日:2023年3月30日
DOI:10.1007/s00787-023-02199-4