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2021.01.14

肥満の有無を考慮した肝機能指標(ALT・GGT)の組み合わせと糖尿病有病との関連に関する論文がJournal of Epidemiology誌に掲載

予防医学・疫学部門の板橋芙美助手らが執筆した肥満の有無を考慮した肝機能指標(ALT・GGT)の組み合わせと糖尿病有病との関連に関する論文がJournal of Epidemiology誌に掲載されました。

2型糖尿病(以下糖尿病)のリスク因子として肥満が知られており、糖尿病の発症・重症化予防において肥満対策は重要とされています。ところが近年、日本やアジア諸国では、非肥満の糖尿病有病者の増加が報告されており、肥満対策以外の糖尿病対策の必要性が求められています。これまでの研究では、脂肪肝が肥満に関係なく糖尿病と関連することが報告されています。しかしながら、脂肪肝の診断は腹部超音波検査や肝生検が必要であり、一般的な健康診査では検査されません。一方、肝機能指標であるAlanine aminotransferase (ALT)とGamma-glutamyl transferase(GGT)は、脂肪肝の代理マーカーとしても使用され、特定健康診査でも検査が可能です。

そこで本研究では、肥満の有無を考慮してALTおよびGGTの組み合わせと糖尿病有病の関連について検討することを目的にしました。対象者は、東北メディカル・メガバンク計画の地域住民コホート調査参加者のうち、岩手県と宮城県の特定健康診査の会場で調査に参加した62,786人としました。
随時血糖値200mg/dL以上またはHbA1c6.5%以上または、糖尿病で通院中の者を糖尿病有病と定義し、対象者を肥満の有無(カットオフ値BMI25kg/㎡)、ALT(カットオフ値30IU/L)、GGT(カットオフ値50IU/L)により8群に分類しました。この8群と糖尿病の有病オッズ比について、性別、年齢、喫煙状況、飲酒状況、糖尿病の家族歴、中性脂肪、LDLコレステロール、HDLコレステロール、余暇の身体活動量、居住地域(岩手県、宮城県)を考慮して検討しました。
その結果、非肥満・低ALT・低GGT群と比較し、非肥満群ではALTとGGTの両方もしくはいずれかが高値の場合、有意に糖尿病の有病オッズ比が高かったことを示しました。また、肥満群ではALTとGGTの両方が低い場合においても糖尿病の有病オッズ比が高く、ALTとGGTの両方もしくはいずれかが高値の場合は更に糖尿病の有病オッズ比が高かったことを示しました。

今回の結果から、ALT値、GGT値の改善および肥満の改善が糖尿病対策において重要であり、特に非肥満者にとって肝機能を指標とした生活改善が重要であることが示唆されました。

書誌情報

タイトル:Combined associations of liver enzymes and obesity with diabetes mellitus prevalence: The Tohoku Medical Megabank Community-based Cohort Study
著者:Fumi Itabashi, Takumi Hirata, Mana Kogure, Akira Narita, Naho Tsuchiya, Tomohiro Nakamura, Naoki Nakaya, Ryohei Sasaki, Nobuyuki Takanashi, Kiyomi Sakata, Kozo Tanno, Junichi Sugawara, Shinichi Kuriyama, Ichiro Tsuji, Shigeo Kure, and Atsushi Hozawa
掲載誌:Journal of Epidemiology
掲載日:2020年12月26日
DOI:10.2188/jea.JE20200384