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2018.06.25

東北メディカル・メガバンク計画による 3.5千人分の日本人全ゲノムリファレンスパネルに X染色体とミトコンドリアゲノム情報を追加【プレスリリース】

より広範な疾患に対応、国際比較も容易に

発表のポイント

・東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)はこれまで進めてきた全ゲノム解析*1のデータ約3.5千人分をもとに、内容を大幅に拡充・更新した全ゲノムリファレンスパネル3.5KJPNv2を公開しました。
・今回の公開にあたっては、これまでのリファレンスパネルのデータに含まれていなかった性染色体*2であるX染色体、そして、ミトコンドリア*3のゲノム情報を新たに加えました。日本人のX染色体やミトコンドリアの情報を含む1,000人規模以上のゲノム情報を発表した例はこれまでになく、初のデータとなります。
・また、データ解析手法を国際標準に準拠した手法に更新、海外の大規模ゲノム解析との比較がより容易なリファレンスパネルとして再構築しました。更に、データ公開サイトも刷新して、研究者の方々により使いやすいものとしました。
・X染色体やミトコンドリアには、比較的発症頻度の高い遺伝性疾患の原因となる遺伝子が多数含まれており、新規リファレンスパネルの公開は特に小児科・産婦人科・遺伝カウンセリング領域の疾患について、研究者や医療関係者に利活用されることが想定され、我が国の個別化医療・個別化予防に向けた研究が促進されることが期待されます。

概要

ToMMoは全ゲノム解析のデータ約3.5千人分をもとに、日本人による標準的な全ゲノムリファレンスパネルを国際比較に利用しやすくするために再構築し、新たな情報を大幅に拡充した3.5KJPNv2を公開しました。本パネルの対象者構成は、2017年9月に公開した全ゲノムリファレンスパネル(以下、3.5KJPN)とほぼ同様で、東北メディカル・メガバンク計画による宮城県と岩手県でのコホート調査*4への協力者3,342人、独立行政法人国立病院機構長崎医療センターにおける協力者181人、ながはま0次予防コホート事業への協力者29人で構成される日本人一般住民合計3,552人分です。
今回のパネル更新の要点は以下の通りです。

●X染色体の情報を追加したこと
X染色体上で、200万個を超える一塩基バリアント*5(SNV)を発見して、パネルに収載しました。
●ミトコンドリアの情報を追加したこと
ミトコンドリアDNA上で、2千個以上のSNVを発見して、パネルに収載しました。
●国際標準に準拠した解析手法を用いて国際比較に優れたデータとしたこと
現在の国際的な標準手法とされるGATK Best Practices*6に準拠した方法により再構築を行いました。これにより、海外のゲノムデータと定量的な比較がより容易となりました。
●認証されたユーザーに対して詳細な検索機能を導入したこと
頻度1%以上のSNVに限っていたブラウザ上での検索が、認証されたユーザーでは全てのSNVで可能になりました。また、検索画面上で国際1000人ゲノムデータ*7におけるアレル頻度データも同時に表示する機能を実装しました。これにより、国際的なデータベースと比較することも簡便になりました。

また、従来の3.5KJPNが有していた以下の特長は3.5KJPNv2にも引き継がれています。
 ●長崎や長浜(滋賀県)におけるプロジェクトの協力により、東北在住以外のデータを取り込んだ。また、岩手・宮城両県でのコホート参加者についても、調査票情報から由来が両県以外の方々を多く抽出し、北は北海道から南は沖縄までカバーする日本人として代表性の高いゲノム情報とした。
 ●延べ約329兆塩基もの高品質な全ゲノム断片配列情報を解読し、スーパーコンピュータによる情報解析技術と他の手法による実験結果による検証とを組み合わせた信頼度の高い配列情報であること。

【用語等説明】
*1. 全ゲノム解析:生物がもつ遺伝情報のセットをゲノムと呼ぶが、その全てを解析することを全ゲノム解析と呼ぶ。ヒトにおいては、一人あたり約30億塩基分x2セット持ち、その全ての情報を解析すること。
*2. 性染色体:ヒトにおいてはヒトが持つ23対46本の染色体のうち、X染色体とY染色体を性染色体と呼ぶ。原則として男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持ち、女性はX染色体を2本持ち、性別により構成が異なる。
*3. ミトコンドリア:細胞内において、エネルギー生産を担う小器官。独自のDNAを持つ。世代間においては、卵子を通じて継代される。
*4. コホート調査:ある特定の人々の集団を一定期間にわたって追跡し、生活習慣などの環境要因・遺伝的要因などと疾病発症の関係を解明するための調査のこと。
*5. バリアント:標準となる配列とは異なること。置換(塩基が置き換わっていること)、欠失(塩基がなくなっていること)、挿入(塩基が挿入され、増えていること)などがあるが、本リファレンスパネルにおいては現状では置換のみを搭載している。
*6. GATK Best Practices:近年、国際的に標準的な解析手法となりつつある解析手法。米国のBroad Instituteによる全ゲノム解析をはじめ、最近の大規模なゲノム解析では、この手法を基にした解析を行う例が多々見られる。
*7. 国際1000人ゲノムデータ:人類集団の広範かつ詳細な遺伝的多様性の収集を目指して、世界各地の約1,000人の全ゲノムシーケンスを行った国際研究計画のデータ。現在解析人数を2,504人にまで拡張したphase3が完了している。

プレスリリース詳細(PDF)

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