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2017.10.23

卵巣明細胞癌に生じるゲノム異常に関する論文が掲載されました

日本人に多い、悪性度の高い卵巣がんのゲノム解析によって、発がんメカニズムの解明につながる成果

卵巣がんは女性が罹患する癌の中でも悪性度が高く、その対策が求められています。中でも日本人に多い明細胞癌は卵巣がんの中でも化学療法抵抗性を示し、長期生存率が低いことが知られています。

今回、東北メディカル・メガバンク機構と東北大学医学系研究科婦人科学分野およびセンターオブイノベーション東北大学拠点の共同研究チームが、東北大学病院で手術を行った卵巣明細胞癌48例の全エクソン解析を行った研究結果を報告しました。この研究で判明したことは、1)明細胞癌において、これまで卵巣癌との関連が指摘されてこなかった核酸代謝酵素(シチジンデアミナーゼ:APOBEC)の活性化が関与する発癌経路が示唆された、2)家族性腫瘍症候群のひとつであるリンチ症候群が疑われる症例が複数存在し、明細胞癌の中に一定頻度でリンチ症候群が関連する可能性が示唆された、3)既存の分子標的薬剤に反応する可能性のある症例も複数認め、エクソーム解析のがん臨床診断上の有用性が示された、など多数の新しい知見が得られました。この解析に際しては、東北メディカル・メガバンク計画の日本人1,070人分の全ゲノムリファレンスパネル(1KJPN)の遺伝子多型のデータも活用されました。

卵巣明細胞癌は日本人で発生頻度が高く、抗癌剤が効き難く治療が困難な疾患でしたが、ゲノム解析による個別化医療が有用である可能性が示唆されました。今後、東北メディカル・メガバンク機構と東北大学病院個別化医療センターは共同でがん患者の検体のゲノム解析を推進し、適切な分子標的薬剤が選択可能な症例をできるだけ多く同定し、治療につなげていく方針です。

この研究成果はGenes, Chromosomes and Cancer誌に2017年10月16日付でオンライン出版されました。

【書誌情報】
論文題名:Identification of somatic genetic alterations in ovarian clear cell carcinoma with next generation sequencing
掲載誌:Genes, Chromosomes and Cancer
著者:Yusuke Shibuya, Hideki Tokunaga, Sakae Saito, Kazurou Shimokawa, Fumiki Katsuoka, Bin Li, Kaname Kojima, Masao Nagasaki, Masayuki Yamamoto, Nobuo Yaegashi, Jun Yasuda
Accepted manuscript online: 16 October 2017
DOI: 10.1002/gcc.22507