災害交通医療情報学寄附研究部門(第1期~第3期)

設置の経緯

近年、医療情報および交通情報のインフラが急速に整備されてきたことから、これらの情報の的確な連携により公衆衛生の向上が期待できる可能性があります。一方、東北大学では東北メディカル・メガバンク機構を中心に東日本大震災の被災地における健康情報の幅広い収集が行われています。これらの健康、医療情報と交通情報を有機的に結合・解析を推進することで、わが国における公共交通機関と健康の関連、また医療機関の適正な地理的配置等の詳細な分析が可能になります。
こういった背景のもと、2013年に東日本旅客鉄道株式会社により東北大学大学院医学系研究科に「災害交通医療情報学寄附研究部門」が開設されました。2016年度からは、東北メディカル・メガバンク機構に中心を移して継続しております。
開設以来本寄附研究部門では、医療、健康、交通情報を有機的に結合することにより、駅・公園・スーパーマーケットへのアクセスが良いほど妊婦及び成人の歩行習慣、体格、生活習慣に良好な影響を与えていることを明らかにしました。また、震災前後のJRをはじめとした交通網の変化に伴い、病院に通院する患者の住所分布が変化することを明らかとし、患者の受療行動における公共交通機関の影響を明らかとしました。
今後、急速に進行する高齢化に備え、住民の健康を守るための持続可能性の高い町づくりが必要となります。また、災害発生時の医療アクセスを考えた場合、医療機関の適正配置等の検討が必要となります。これらの町づくり、医療機関の適正配置のために必要な情報について検討を進めるため本寄附研究部門を設置し、2022年3月に第3期まで完了しました。なお、本寄附研究部門は2022年4月より、第4期が開始され、2025年3月まで継続される見込みです。

研究内容

本研究部門は、以下の3つをメインテーマとして、地理情報システム(GIS)等を活用し研究を推進しました。
(1)公共交通機関を拠点とした町づくりが各世代の住民の健康に与える影響の検討
(2)超高齢化社会を迎え、公共交通機関の重要性が増した状況における適正な医療機関配置の検討
(3)平時・災害時において医療機関をはじめとしたコミュニティ施設が公共交通機関に併設されることについての影響の検討

期待される成果

(1) 超高齢化社会を迎える我が国における未来の町づくりのありかたについて提言し、持続可能で利便性の高い社会基盤の構築に貢献する。
(2) 町づくりを所掌する行政機関との情報共有の場を増やすことにより健康的な町づくり実現を加速、推進する。
(3) 災害時において、公共交通機関拠点に併設されることが望ましい施設について提言を行う。

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