お知らせ
- 2026.03.09
一般集団における大脳白質病変の容積とNOTCH3遺伝子の稀なバリアントとの関連についての論文が掲載
頭部MRI検査での、大脳白質*の病変の容積と、遺伝性脳小血管病CADASILの原因遺伝子であるNOTCH3のバリアントとの間の有意な関連を報告した論文が、日本老年医学会の公式英文誌Geriatrics & Gerontology Internationalに掲載されました。
大脳白質病変は高齢者で高率に認められ、年齢、高血圧、喫煙などの環境要因と遺伝要因双方の関与が知られていますが、具体的な遺伝子やバリアントはまだほとんど解明されていません。これまで大脳白質病変と遺伝性脳小血管病の原因遺伝子との関連に着目した研究報告は海外における研究のみであり、今回初めて日本人を対象とした研究を行いました。
解析対象としたのは、ToMMoの脳と心の健康調査(脳MRI研究)における、FLAIR画像**とゲノム解析データを持つ324人の、MRI画像、遺伝性脳小血管病遺伝子(NOTCH3, ABCC6, COL4A1, COL4A2, GLA, HTRA1, TREX1)情報、調査票情報、血液検査情報です。その結果、解析集団中にABCC6のみ、病的バリアントを認めました。また、海外の先行研究との比較のため、遺伝性脳小血管病で最も頻度が高いNOTCH3に関しては、病的バリアント以外の稀な機能性バリアントに着目しました。
年齢、性別、高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症、飲酒習慣、喫煙習慣を調整因子として、ABCC6、NOTCH3との関連解析を行った結果、大脳白質病変容積とNOTCH3の稀なバリアントとの間に有意な関連を認めました。
今回の研究対象人数は限られておりますが、本研究により、海外の先行研究と同様に日本人一般集団において大脳白質病変の容積が脳小血管病の代表的遺伝子であるNOTCH3の稀なバリアントと関連している可能性が示唆されました。
今後は、人数を増加させ、全ての候補遺伝子の稀なバリアント解析、さらにゲノムワイド解析といった包括的な解析を行うことによって、大脳白質病変の遺伝要因の解明が進み、脳小血管病の診断・治療に貢献することが期待されます。
用語説明
*大脳白質:大脳の内側の、神経細胞間の複雑で高速な情報伝達を担う神経線維が豊富な部位である。
** FLAIR画像:脳脊髄液、大脳白質のいずれも低信号(黒くなる)となるようなMRIの撮像法である。虚血や炎症などによる病変が大脳白質に生じると、病変部分は高信号(白くなる)として検出される。
書籍情報
タイトル: Significant Correlation Between White Matter Hyperintensity Volume and Rare NOTCH3 Variants in the General Japanese Population
著者名: Ikuko Mizuta, Fumio Yamashita, Yoichi Sutoh, Atsushi Shimizu, Akiko Watanabe-Hosomi, Yayoi Otsuka-Yamasaki, Shunji Mugikura, Kengo Kinoshita, Makiko Taira, Naoko Mori, Akiko Miyazawa, Hiraku Matsuura, Tomo Saito, Hiroshi Sakamoto, Masayuki Yamamoto, Makoto Sasaki, Nobuo Fuse, Toshiki Mizuno
掲載誌:Geriatrics & Gerontology International
掲載日:2026年2月11日
DOI:10.1111/ggi.70400