お知らせ
- 2025.12.08
災害後のこころのケアでのスクリーニング精度に関する論文が掲載
東北メディカル・メガバンク計画地域住民コホートおよび三世代コホートに参加の東日本大震災の被災経験がある方々を対象に、災害後のこころのケアで実施されているスクリーニングの精度について検討した論文がJMA Journal に掲載されました。
大規模災害後、被災された住民の方のこころのケアの提供を優先的に行うか否かを判断するため、K6(Kessler 6)といった心理ストレスを測定する尺度が広く用いられています。今回はこの尺度を用いたスクリーニングがどの程度の精度があるかについて検討を行いました。
地域住民コホートと三世代コホートの参加者のうち、コホート調査参加後2021年末までの間で自殺が原因で亡くなった方を対象に、コホート調査参加時のK6得点がどの程度自殺死亡と関連するのか、K6得点からの予測が可能か、およびその精度を検討しました。しかし、先行研究から、K6単独での自殺死亡の予測能が十分ではないことが報告されていたため、多量飲酒、社会的なつながり、睡眠障害、うつ病・PTSDの既往歴、家族を亡くした経験、被災による稼働減少、災害ストレス症状の要因とK6を組み合わせることで、より精度が向上する、といった仮説のもと検討しました。その結果、K6単独での災害後の自殺死亡の予測能の精度は高くなかった一方で、「被災後の稼働減少」「震災後に新たに発生したPTSD」「思い出したくないのに災害のことを思い出す・夢に見る」らを組み合わせることで、自殺死亡の予測能の精度が向上するという結果が得られました。
震災後のこころのケアにおいて、リスクの高い住民の早期発見や自殺予防の重要な知見となり得ることが示唆されました。災害後メンタルヘルス対応のガイドライン等に盛り込むこと、さらには、ハイリスク者を効率的にスクリーニングし、いかに支援につなげていくかなど、これからの災害後のこころのケアへの展開、社会実装につなげ、自殺を含めた災害による死亡の大幅な削減に寄与できればと思います。
書誌情報
タイトル:Screening for Psychological Distress, Disaster-Related Experiences, and Newly Developed Mental Disorders Among Residents Affected by the Great East Japan Earthquake: Implications for Suicide Prevention
著者名:Masatsugu Orui MD, Mana Kogure, Yuka Kotozaki, Taku Obara, Mami Ishikuro, Aoi Noda, Genki Shinoda, Keiko Murakami, Hirohito Metoki, Masahiro Kikuya, Yoshitake Takebayashi, Masaharu Maeda, Naoki Nakaya, Kozo Tanno, Atsushi Hozawa, The Tohoku Medical Megabank Project Study Group, Shinichi Kuriyama
掲載誌:JMA Journal
掲載日:2025年11月28日
DOI:10.31662/jmaj.2025-0257