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2025.07.25

東北メディカル・メガバンク機構 シンポジウム 「つながる、ひろがる バイオバンクが創る未来」を開催しました

ToMMoは、7月14日(月)に東北メディカル・メガバンク機構 シンポジウム 「つながる、ひろがる バイオバンクが創る未来」を東京のトラストシティ カンファレンス・丸の内にて開催しました。会場にはちょうど100名、オンラインには303名の方々にご参加いただきました。

開会にあたって

最初に山本 雅之機構長から、ToMMo設立の経緯、計画立案時の構想が語られました。ToMMoがどこを目指しているのか、ToMMoの仲間たちがどのような成果を出しているのか、このシンポジウムで紹介するので有意義に過ごしてほしい、という言葉によりシンポジウムが開幕しました。

来賓挨拶

まず文部科学省ライフサイエンス課 課長 倉田 佳奈江様より、文科省が10年以上にわたり国家プロジェクトとしてToMMoを支え続けてきたご説明とともに、現在のように利活用可能な試料・情報が蓄積できたことに対して、地域住民の方々のご協力とToMMoおよび関係者へ感謝の言葉が述べられました。またバイオバンクの構築は次世代医療推進の観点から重要政策として明確に位置づけられていること、バイオバンクデータのようなビッグデータは「AI for Science」の実現に必須であり、質の高いデータの創出と、その利活用の推進を期待する旨を述べられました。

次に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED) 統括役 鈴木 健彦様より、発足当時から見守ってきた計画が大きく育ったことに対しての感慨、そしてここ10年のバイオバンクデータの利活用件数の増加は目覚ましく、バイオバンクはデータ駆動型の研究の推進、さらに創薬などの社会還元の基盤となっており、これからも期待を寄せているというお言葉をいただきました。

最後に岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM) 機構長 丹野 高三先生より、計画の発足当初からToMMoと一緒に歩んできたこと、バイオバンクが年々充実し、試料・情報の使いやすさにおいても新しい試みを行っていること、そして何よりバイオバンクが参加者の皆さまと地域全体の支えあっての存在であることを常に肝に銘じている、と述べられました。

ToMMo講演1 「複合バイオバンクの実現と、利活用の広がり」

泉 陽子副機構長より、複合バイオバンクの詳細、ToMMoの特徴を活かした研究利用、公的研究インフラとしてのバイオバンクの課題と第4段階調査についてご説明しました。基盤としてのバイオバンクに民間を含む個別のプロジェクトが上乗せされることにより、バイオバンクにデータが還元され、ますますバイオバンクが充実する、そのような理想的なエコシステムが形成されつつあることが紹介されました。

各界からの期待

泉副機構長の講演に続いて、各界からの期待として、企業関係者から4題の演題がありました。

 
左から、塚原 克平様、田畑 雅章様、川原田 雄希様

日本製薬工業協会(製薬協) 研究開発委員長 塚原 克平様からは、「バイオバンクに対する製薬業界の期待」と題し、製薬協のビジョンに沿って、試料・情報を収集していくことの重要性や、ToMMoとの10年近い協業の具体的事例の紹介、2025年5月の文部科学省の「次世代医療実現のための基盤形成に関する作業部会」の報告書に沿って国内のバイオバンク事業が充実していくことへの期待が述べられました。

NTTプレシジョンメディシン株式会社 取締役 田畑 雅章様からは、「データ利活用プラットフォームが導く ToMMoビッグデータの価値創造への期待」と題して、プレシジョンメディシンの実現に向けたデータ利活用基盤構築の重要性が語られ、その中で、ToMMoと行われている協業の現状と今後のデータ利活用への期待が提示されました。

トレジェムバイオファーマ株式会社 科学技術顧問の時田 義人様は、急なご事情で欠席されましたが、プレゼンテーション資料が紹介され、無歯症の治療・新薬の開発に向けて、ToMMoのデータベースの利活用と、今後に期待することとして治験に即応できるコホート構築などが示されました。

株式会社ちとせ研究所 シニアマネージャー 川原田 雄希様は、「バイオテクノロジー企業として寄せる期待」として、腸内細菌叢に着目したヘルスケアの取組について、数年前のToMMoとの協業によるデータ取得と公開、食事や運動などの介入により変えることのできる体質としての腸内細菌叢についての取組が語られました。

社会実装に向けて

その後、社会実装に向けて、として2名の方に登壇していただきました。

 
左から、桜井 なおみ様、荻島 創一代表

一般社団法人 CSRプロジェクト 代表理事 桜井 なおみ様からは、虫の目、鳥の目、魚の目、更に蝙蝠の目と、近づいて様々な角度から見る、俯瞰的に見る、過去から未来へ見る、また固定観念にとらわれずに物事を捉える必要性が語られました。

バイオバンク・ネットワーク ジャパン 代表 荻島 創一代表からは、日本のバイオバンクが団結して取り組んできたバイオバンク横断検索や、バイオバンク利活用ハンドブック制作などの試みが語られ、6月6日をバイオバンクの日として登録し、更に社会に向けて広がっていくバイオバンクのビジョンが示されました。

講演

続いて、アカデミアから3名の先生方に講演をいただきました。

東京大学 医科学研究所 バイオバンク・ジャパン(BBJ)代表 松田 浩一先生は、「医療実装を目指したToMMoとバイオバンク・ジャパン連携の取組み」と題して、国内外のバイオバンクの取り組み事例や動向について紹介いただきました。バイオバンク事業の医療実装にむけて、疾患バイオバンクであるBBJと一般住民バイオバンクであるToMMoの連携によるアジア最大規模の量的形質遺伝子座の解析やこれまでの研究実績についてお話しされました。

ToMMoの「戦略的パートナー」第1号となった国立成育医療研究センター 理事長 五十嵐 隆先生からは、「成育医療研究センターの新しい役割:性差医学・医療の推進」と題してお話をいただきました。健康や疾患には男女差があり、とりわけ女性に特化した医療について日本では課題があること、他方で個人間や年齢によって、単に男女に二分されない性の多様性があることがわかってきたことで、今後も性差やライフコースに応じた研究を推進することの必要性が提示されました。

国立がん研究センター 理事長・研究所長 間野 博行先生は、「保険医療としてのがんゲノム医療体制」と題し、がんゲノム医療を保険医療として実施、普及されてきたこれまでの取り組みをお話いただきました。がんゲノム医療の実施には、質が保証された検査の実施体制や遺伝カウンセラーによる支援などの多様なアクターの関与や、製薬企業を含む他機関とのデータ共有のためのセンター(C-CAT)の設置等が必要であり、日本では先進的な取り組みとしてそうしたネットワークが拡大してきたことや、今後の展望が示されました。

ToMMo講演2 「ToMMoで創る未来型医療」

木下 賢吾副機構長より、ToMMo発足時に思い描いたビジョンと、ビジョンのもと取り組んできたコホート調査と複合バイオバンクの構築、そこから生まれた成果事例が紹介されました。コホートとバイオバンクが、13年間成長し続けてきたこと、これからも成長していくこと、バイオバンクはヒューマンバイオロジーのインフラであり、生きていくうえで欠かせない存在である、ということが述べられました。そして、思い描いていた夢の実現によりさまざまなステークホルダーとつながることができ、夢がさらにひろがっていることを熱く語りました。

閉会の辞

最後に、東北大学大学院医学系研究科 研究科長・医学部長 石井 直人教授より、ゲストの方々の講演に対するお礼の言葉と、引き続きToMMoへの支援をお願いしたいこと、そして東北大学自身もバイオバンクを活用してともに新しい価値観を創造していきたいと考えていることが述べられ、シンポジウムは閉会しました。

 

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