お知らせ
- 2025.06.13
フォン・ヴィレブランド病(VWD)に関連する遺伝子変異があっても出血しやすいとは限らない
フォン・ヴィレブランド病(VWD)は血が止まりにくくなる先天性の病気です。原因となる遺伝子変異があっても必ずしも発症するわけではなく、人によって症状に大きな差があることが東京医科大学との共同研究で分かりました。
VWDは遺伝性出血疾患のひとつで日本では2021年時点で約1,500人が診断されています。この数は諸外国と比べて少なく、軽症で日常生活に支障がない未診断例が多いと考えられます。そこで、VWDに関連するとこれまでの研究で報告された遺伝子変異について調べてみました。
ToMMoの8,380人の全ゲノム解析データ(8.3KJPN、jMorp)からVWDに関連する遺伝子変異を計29件検出しました。これらのうち9件(31%)は既にオランダのデータベース(LOVD)に登録されており、また17件は米国医療遺伝学会(ACMG)の分類で「病的」または「病的の可能性あり」とされました。さらに、VWDとの関連が示唆された遺伝子変異の保有者から得られた血漿43検体を解析した結果、フォン・ヴィレブランド(VW)因子の活性の低下は6件にとどまりました。また、このうちの2件は新規変異でした。
今回使用した8.3KJPNのデータはほとんどの対象者が東北地方に限られていますが、日本人のゲノム解析で見つかったVW因子遺伝子変異の多くは、病的と予測されても実際には症状が出ないことが多く、発症のしやすさや程度には個人差があることが分かりました。今後、VW因子の発現や代謝に関わる他の要因も評価する必要があります。
書誌情報
タイトル:Comparison of genotypes and phenotypes for von Willebrand factor gene variants using Japanese genome database
著者名:Takafumi Akimoto, Hiroshi Inaba, Soichi Ogishima, Kazuki Kumada, Ayano Mitsuhashi, Ryui Miyashita, Tomoko Yamaguchi, Masato Bingo, Yushi Chikasawa, Keiko Shinozawa, Takeshi Hagiwara, Kagehiro Amano, Eiichi N. Kodama, Ei Kinai
掲載誌:Blood Vessels, Thrombosis & Hemostasis
オンライン掲載日:2025年4月10日 In press
DOI: 10.1016/j.bvth.2025.100070