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2017.04.21

DNAメチル化の網羅的解析によってエピゲノム多様性を解読~個別化予防・個別化医療に貢献可能~【プレスリリース】

東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)の勝岡史城准教授他、ゲノム解析部門のチームは、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)生体情報解析部門の清水厚志特命教授、八谷剛史特命准教授らの研究チームに協力し、日本人100人規模の2種類の血液細胞のDNAのメチル化を網羅的かつ高精度に解析することでエピゲノムの多様性を解読し、個人差の大きいDNAメチル化部分が疾患発症により大きく影響している可能性が高いことを初めて解明しました。

本研究では、ToMMoの研究者は全ゲノムシークエンスの実施や、DNAのメチル化状態を調べる全ゲノムバイサルファィトシークエンスおよび遺伝子の発現を調べるトランスクリプトーム解析をIMMと共同で行うなどの貢献をしました。

この成果は国際科学雑誌 Genomic Medicine に2017年4月13日付(オンライン公開)で発表されました。

 

【概要】

近年、遺伝子の配列を変えずに化学修飾によって働きを制御する「エピゲノム」が注目されています。エピゲノムの一つであるDNAメチル化は、細胞分化の主役である一方、喫煙・飲酒・ストレスなどの環境要因によって異常が生じ、生活習慣病・がん・うつなどの種々の疾患の誘因となっていることが明らかになってきました。

DNAのメチル化は、遺伝子の発現を制御する重要なエピゲノム修飾の一つです。本研究では、DNAのメチル化状態が個人毎に異なる部位を、血液細胞を用いてゲノムワイドに探索し、これら情報が疾患感受性に関わるメチル化部位の同定に役立つことを示しました。

 これまでに疾患と関わる数万の遺伝子配列の個人差(ゲノム多型)が同定されていますが、ゲノム多型のみでは疾患の発症について十分に説明することができませんでした。今回、エピゲノム多様性の大きな部位が疾患と関連する可能性が高いことが判明したことから、今後効率的なエピゲノム解析が可能となり、東北メディカル・メガバンク計画において日本人のエピゲノム多様性情報の収集を継続するとともに、生活習慣・血液検査・疾患発症などとの関連性を調べることで、環境要因によるDNAメチル化の変化が生活習慣病・がん・うつなどの発症に及ぼす影響が解明され、これらの疾患の予防・早期診断・治療に大きく貢献することが期待されます。

プレスリリース詳細

なおIMMのウェブサイトにてDNAメチル化の頻度や平均、分散の大きさなどが「3層オミックス参照パネル」として公開されています。

 

【論文】
Genome-wide identification of inter-individually variable DNA methylation sites improves the efficacy of epigenetic association studies

日本語タイトル:全ゲノム規模の個人毎のDNAメチル化部位の変動部位の同定はエピゲノム関連解析の有効性を改善できる
npj Genomic Medicine 2, Article number: 11 (2017)
doi:10.1038/s41525-017-0016-5

Tsuyoshi Hachiya, Ryohei Furukawa, Yuh Shiwa, Hideki Ohmomo, Kanako Ono, Fumiki Katsuoka, Masao Nagasaki, Jun Yasuda, Nobuo Fuse, Kengo Kinoshita, Masayuki Yamamoto, Kozo Tanno, Mamoru Satoh, Ryujin Endo, Makoto Sasaki, Kiyomi Sakata, Seiichiro Kobayashi, Kuniaki Ogasawara, Jiro Hitomi, Kenji Sobue and Atsushi Shimizu

 

【用語解説】

DNAメチル化:主にDNAのC(シトシン)塩基にメチル基(-CH3)が結合した状態を指し、第五の塩基と称されることもあります。

 

関連リンク

3層オミックス参照パネル