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第9回 新しい日本の地図「JG1」

ヒトの全ゲノム解析において現在もっとも利用されている解析方法、それは“短鎖技術による次世代シークエンシング解析”です。
これは、ゲノムDNAを数百塩基単位でバラバラにしてから解読して、解読した短い配列を基準となるゲノム配列に当てはめていくというものです。
【参考】ToMMoではこうやってDNAを解読しています(前編:次世代シークエンサー)

この方法はいろいろな用途で広く使われていますが欠点もあります。基準のゲノムに似ているゲノムであれば精密に解析できるのですが、解析しようとするゲノムに基準ゲノムには全く含まれていない箇所があったり、一部が何度も繰り返されていたりするような場合に、うまく当てはめられず、解読ができないのです。
これまで基準のゲノムとしてよく使われていたのが「国際基準ゲノム配列」です。この配列は世界中で精度を向上させる取組が進んでバージョンアップが繰り返されており、研究、臨床を問わず多くの解析で使われています。しかし、主に一人のアフリカ系アメリカ人をもとに作成されていたため、この人物のゲノムから離れた民族の場合、解析できていないところがあったり、間違った解析をしてしまったりしていたことがわかっていました。そこで民族集団ごとに基準となるゲノム配列を作成する動きが盛んになってきています。
【参考】各国ですすむ基準ゲノム構築プロジェクト

国際基準ゲノム配列のライブラリの内訳

ToMMoでは、日本人の基準ゲノム配列を作成しバージョンアップを重ねています。今もっとも新しいバージョンは2019年2月に発表した「JG1」です。何回かバージョンアップをしているのになぜJG”1”なのでしょうか? JG1では、初めて国際基準ゲノムに一切頼らず複数の解析技術を駆使して、日本人の全ゲノム配列を決定しました。配列の決定方法を変更したJG1はそれまでのバージョンより数段、精密かつ正確になったのです。
【参考】プレスリリース:「日本人基準ゲノム配列」初版JG1の公開~日本人のゲノム解析がこれまでよりも精密かつ正確に~

2000年、ヒトゲノム計画のドラフト版が完成したとき、当時のアメリカ大統領ビル・クリントン氏はこのゲノム配列を「もっとも価値のある偉大な地図」と称しました。この言葉を引用するならば、JG1は「もっとも価値のある偉大な日本地図」です。
ヒトゲノム計画のドラフト版から20年。これをもとにした「国際基準ゲノム配列」は世界中で使われるようになりました。
一方約200年前、伊能忠敬は初めて測量による日本地図を完成させました。これは間違いなく偉業ですが、その地図は今日の地図と比較するとわずかながらずれがあります。また、海を隔てた遠く離れた土地については不完全なところもあったようです。
JG1もヒトゲノム計画のドラフト版や伊能忠敬の日本地図と同様、まだ解読できていない箇所もあれば、ブラッシュアップが必要なところもたくさんあります。ただ後々振り返ったとき「偉大な一歩」となる可能性を大いに秘めているのです。

公開されている jMorp 上の Genome Sequence(JG1) 画面

プレスリリース時の記者説明会のようす

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