お知らせ
- 2026.08.31
jMorpのデータを拡張(ゲノム [長鎖構造多型パネル, JG3頻度パネル, MNV, singleton, アノテーション]・メチローム・メタボローム・健康調査情報)
ToMMoは2026年8月31日(月)、日本人多層オミックス参照パネル(jMorp: Japanese Multi Omics Reference Panel)に搭載するデータを追加・拡張しました。詳細は以下をご覧ください。
- 1. ゲノム(搭載データの追加・拡張)
- ⻑鎖構造多型パネル(JSV2)
- JG3版 14KJPN SNV/INDEL頻度情報 追加
- 61KJPN MNV頻度情報
- 61KJPN off-panel singletons
- アノテーション情報追加
- 2. メチローム(搭載データの追加)
- DNAメチル化サマリーデータ
- DNAメチル化キャプチャプローブセット設計情報
- DNAメチル化解析用細胞種組成推定パラメータ
- 3. メタボローム(搭載データの拡張)
- NMR
- MS
- 4. 健康調査情報(搭載データの拡張)
- jMorpリンク(チュートリアル等)
1. ゲノム(搭載データの追加・拡張)
⻑鎖構造多型パネル(JSV2)
これまでjMorpでは、111組の親子(333人)の長鎖リード全ゲノムシークエンスデータを用いて構築した、日本人構造多型パネル「JSV1(Japanese Structural Variation 1)」を公開してきました。今回、新たに大規模な長鎖リードデータを追加するとともに、JSV1で使用したデータも最新の情報解析手法で改めて解析し、JSV2として統合・拡充しました。
長鎖リード全ゲノムシークエンスは、DNAを数千から数万塩基、場合によってはそれ以上の長さで連続して読み取る技術です。短鎖リードによる解析では、反復配列を含む領域や複雑なゲノム領域に存在する構造バリアント(SV)、繰り返し配列(STR)およびコピー数バリアント(CNV)を正確に把握することが困難な場合があります。長鎖リードを用いることで、こうした領域をまたいでDNA配列を読み取り、従来は検出や解析が難しかったゲノム多様性をより詳細に捉えることができます。
JSV2では、約450組の親子トリオを含む約1,800人の長鎖リード全ゲノムシークエンスデータを追加しました。PacBio HiFiおよびONTによって新たに取得したデータに加え、JSV1で使用したONTデータについても、現在の情報解析手法を用いて改めて解析し、得られた結果を統合しています。また、血縁関係による頻度の偏りを避けるため、血縁関係を考慮して選定した約1,100人を対象に、各ゲノム多型のアレル頻度を算出しました。
JSV2を参照することで、解析対象となる構造バリアント、STRおよびCNVが日本人集団においてどの程度の頻度で認められるかを確認できます。これにより、希少疾患に関連するゲノム多型の絞り込みや、日本人集団に特徴的なゲノム多様性の解析など、医学・遺伝学研究におけるゲノム多型の解釈に役立つことが期待されます。
JG3版 14KJPN SNV/INDEL頻度情報 追加
これまでjMorpでは、国際的に広く用いられている参照配列であるGRCh37/GRCh38を用いた短鎖全ゲノム解析データ(SNV/INDEL頻度情報)を公開してきました。2024年、日本人集団の遺伝的特徴をより正確に反映したJG3日本人参照ゲノム配列が公開されたことを受け、既存のGRCh37/GRCh38版全ゲノムパネルに含まれる検体のうち、約1.4万人についてJG3を参照配列として再解析を行い、JG3版全ゲノムパネルを新たに構築しました。今回、このパネルに含まれるバリアントサイトおよびその頻度情報を公開しました。
日本人集団に特化した参照配列を用いることで、GRCh37/GRCh38を参照配列とした場合には検出が難しかった変異の把握や、より正確なアレル頻度の算出が期待されます。
あわせて、今回の再解析におけるマッピング結果をもとに、ゲノム全域にわたる1塩基ごとの平均深度(depth)などの情報を算出し、「Genome Accessibilityデータ」として新たに公開します。本データは、ゲノム上の各領域がどの程度の精度・信頼性で解析できているかを示す情報であり、変異情報を解釈する際の参考情報としてご活用いただけます。
61KJPN MNV頻度情報
2024年9月に、SNV/INDEL頻度パネル54KJPNに対するMNV(Multi-Nucleotide Variant)情報を公開しておりましたが、この度、61KJPNに対するMNV情報として拡充しました。
MNVとは、ゲノム上で隣接する複数の塩基が同時に置換される変異のことです。従来のSNV(一塩基多型)としての解析では、隣接する変異がそれぞれ独立したものとして扱われるため、実際には同一のハプロタイプ上で連続して生じている変異であっても、コドン単位でのアミノ酸変化の解釈を誤る可能性があります。MNV情報を参照することで、こうした隣接変異の組み合わせを正しく認識し、より正確なアミノ酸変化・機能予測に基づいたバリアント解釈が可能になることが期待されます。
今回の拡充により、従来の54KJPNから61KJPNへと対象集団が拡大したことで、より多くのサンプルに基づいたMNVの検出・頻度情報を提供できるようになりました。これにより、稀なMNVについてもより高い精度での把握が可能となり、希少疾患の診断や研究における解釈精度のさらなる向上に貢献することが期待されます。
61KJPN off-panel singletons
2025年6月に、約10万人分のゲノムデータをもとに、血縁関係にある人を除いた上で、それぞれの遺伝子変異がどのくらいの頻度で見られるかという情報を公開しました(61KJPN)。血縁者を取り除く作業の過程で、実は本来の解析対象である約10万人(100KJPN)全体では1人だけに見つかっていた変異が、61KJPNの集計上は「一人も見つからなかった(頻度ゼロ)」という扱いになってしまうケースがありえます。こうした極めて稀な変異は、原因不明の病気(難病)の診断において重要な手がかりになることがあります。たとえ「1人だけに見つかった」という情報であっても、「日本人の中で過去に観測された実績がある変異である」ということが分かれば、診断や解釈の助けになると期待されます。
そこで今回、これまで通り61KJPNの頻度情報はそのまま維持しつつ、新たに「61KJPNの集計ではゼロ人だったが、100KJPN全体では1人に見つかっていた変異」についても、追加の参考情報として公開することにしました。なお、この取り組みは既存の61KJPN頻度情報を書き換えたり置き換えたりするものではなく、あくまで希少な変異の解釈をサポートするための補足的な情報提供になります。
アノテーション情報追加
バリアントの付帯情報に、MGeNDおよびCHIP情報を追加しました。今回追加されるMGeND情報は、日本人の臨床情報と遺伝子変異情報を統合したMGeNDデータベースで公開されている、各バリアントと疾患との関連情報です。ClinVarとあわせて参照することで、日本人特有の臨床知見も踏まえた、より多角的なバリアント解釈が可能になることが期待されます。特に、海外由来のデータベースだけでは十分な情報が得られない場合に、日本人集団における実際の臨床報告を確認できる点は、診断や研究における有用な補完情報となります。
また今回追加されるCHIPバリアント情報は、ToMMoと国立がん研究センター東病院との共同研究であるToMMo全ゲノムシーケンスデータを用いた日本人CHIP研究により同定された、約1,000箇所のCHIP Mutation/Candidateバリアントに関する情報です。CHIP(Clonal Hematopoiesis of Indeterminate Potential:意義不明のクローン性造血)は、血液がんなどでみられる遺伝子変異が、健常な方の血液細胞にも見られる現象で、がんゲノムパネル検査(特にリキッドバイオプシー)などにおいて、腫瘍由来の変異との判別を誤る要因となることが知られています。対象となるバリアントには、「CHIP Mutation」または「CHIP Candidate」のフラグが付帯情報として表示されます。この情報を活用することで、検出された変異がCHIPに由来する可能性を事前に把握し、がんゲノム検査等における変異判定の精度向上に役立てていただくことが期待されます。
2. メチローム(搭載データの追加)
岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構(IMM)が管理・運用してきたDNAメチル化データベース「iMETHYL」の2026年3月末での運用停止に伴い、それまでiMETHYLで公開していたデータをjMorpへ移行・統合いたしました。合わせて、今回新たにTMM計画参加者のDNAメチル化サマリーデータ(6件)、実験に用いたDNAメチル化キャプチャプローブ情報(3件)、さらにDNAメチル化解析用の細胞種組成推定パラメータ(2件)の計11件を追加し、ダウンロードいただけるようになりました。いずれのデータも個人レベルのデータは含まず、群別・細胞種別の集計統計値等のみを収録しています。
DNAメチル化サマリーデータ
約150万箇所のCpGサイトを対象に、年代別・性別・群別・細胞種別の平均値やばらつき等の統計値を新たに公開しました。日本人集団におけるDNAメチル化の参照情報として、疾患エピゲノム研究、細胞種特異的なメチル化パターンの解析など、幅広い研究への活用が期待されます。
具体的には、①三世代コホート調査参加者のうちヘプタファミリー(児を中心にみた父母・祖父母の7人家族)の血液DNAメチル化、②小児1,043名(0〜10歳)の唾液DNAメチル化、③地域住民コホート参加者の426名(男女20〜70代)の全血DNAメチル化、④脳卒中症例511名・対照512名の全血DNAメチル化サマリー、⑤地域住民コホート参加者の末梢血単核球(PBMC)由来ゲノム656検体のDNAメチル化、⑥血球8細胞種のDNAメチル化の6件のサマリーデータを掲載しています。
DNAメチル化キャプチャプローブセット設計情報
TMM計画で独自に設計したDNAメチル化キャプチャプローブセット(CDMVv1、CDMVv2、CDMVv3)の対象領域設計ファイル(染色体番号・開始位置・終了位置)を新たに公開しました。上記のDNAメチル化データはこれらのプローブセットを用いて取得されており、解析対象領域の確認や、公開データを二次利用する際の参照情報としてご活用いただけます。
DNAメチル化解析用細胞種組成推定パラメータ
血液および臍帯血のDNAメチル化解析において、細胞種構成(細胞種比率)の推定に用いる係数データを新たに公開しました。血液や臍帯血は複数の細胞種の混合物であり、細胞種構成の個人差が解析結果に影響するため、DNAメチル化データから細胞種構成を推定し補正することが重要となります。日本人集団のデータに基づく本係数データを活用いただくことで、日本人を対象としたエピゲノム研究における細胞種構成の推定精度の向上が期待されます。
3. メタボローム(搭載データの拡張)
NMR
詳細三次調査における解析結果を約6,000人分追加しました。これにより、ベースライン調査時(2013年から2017年にかけて実施した1回目の健康調査)と詳細三次調査時(2021年から2026年にかけて実施した3回目の健康調査)の経時変化を示すグラフのデータ数も増加し、より詳細に経時的な変化を追うことが可能となりました(例:[TCN000033] Glycine)。
すでに公開している妊婦を含む一般成人のデータ等とあわせると、NMRメタボロームデータセットは85,000検体を超える規模となりました。大規模なデータセットとなったことで、性別・年代などの属性別の傾向分析や、より稀な代謝パターンの検出など、多様な研究目的への活用が期待されます。
MS
LC-MS/MSによる標的メタボローム定量解析のうち、Biocrates社のMxP® Quant 500シリーズを用いた解析について、ベースライン調査時の検体を約1,300人分追加するとともに、詳細三次調査時の検体についても、子ども約400人分、成人約150人分を拡充しました。
子どものデータについては昨年度公開済みの約2,000人分に、今回さらに約400人分を追加したことで、子ども・成人双方のデータがより充実し、年代を問わない参照パネルとしての活用がより広い形で可能となりました。小児期から成人期にかけての代謝プロファイルの比較や、成長に伴う代謝変化の把握など、幅広い研究への応用が期待されます。
4. 搭載データの拡張(健康調査情報)
2025年6月に公開した健康調査情報に、検体検査情報・生理機能検査情報の項目を新たに追加しました。これまで公開していた血液検査・尿検査・血算などの約40項目に加え、今回さらに28項目を追加し、血圧や肺機能をはじめとする、より幅広い健康関連指標を横断的に参照いただけるようになりました。
また、あわせてベースライン調査と詳細二次調査時(2017年から2021年にかけて実施した2回目の健康調査)の経時変化を示すグラフも追加し、同一項目における経時的な変化を追うことが可能となりました。単一時点でのデータ比較だけでなく、経過に伴う各項目の変動傾向の把握にも活用いただけます。
関連リンク
jMorp: Japanese Multi Omics Reference Panel

jMorp Tutorial (ユーザーガイド、使い方動画など)