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2025.05.12

変形性関節症の遺伝因子の解明を目的とした国際共同研究の論文が掲載

東北メディカル・メガバンク機構も参画する国際共同研究コンソーシアムは、変形性関節症の遺伝因子の解明を目的として、GWAS(ゲノムワイド関連解析)を中心とした大規模な解析を実施し、その成果が英国科学誌Natureに掲載されました。

変形性関節症は、膝や股関節などの軟骨がすり減って、関節の炎症や変形を引き起こす疾患です。日本でおよそ1,000万人、世界では数億人もの人が罹患しており、痛みや運動機能の低下により、生活の質や健康寿命に深刻な影響を及ぼすほか、他の慢性疾患リスクの上昇とも関連しているとされ、大きな問題となっています。
GO(Genetics of Osteoarthritis)コンソーシアムは、変形性関節症の遺伝因子の解明を目的とした国際共同研究団体であり、主にヨーロッパ系集団を対象として、これまでに最大80万人以上のデータを用いた解析を実施しています。本研究では、集団の規模と多様性をさらに拡大し、日本を含む世界各国の42のコホート・バイオバンクでGWASを実施して得られた要約統計量を、メタ解析と呼ばれる手法で統合した結果、計196万人(症例49万人)分のデータから、変形性関節症と関連すると考えられるゲノム上の部位が962か所検出されました。このうち513か所は、今回新たに検出されたものです。これに、ゲノムの本体であるDNAから転写される、RNA(リボ核酸)と呼ばれる分子や、さらにそこから翻訳されるタンパク質のデータなど、ゲノム以外のデータを組み合わせた解析を実施し、8つの重要な生物学的プロセスを特定しました。
当機構からは、GWASセンター(成田 暁助教、田宮 元教授ら)が中心となって本研究に参画し、計36,000人(症例1,500人)のデータを用いたGWASを実施しました。

本研究により、変形性関節症の発症や進行に関する詳細なメカニズムの解明が加速し、有効な治療薬や予防方法の開発につながることが期待されます。

※GWAS
Genome-wide association study(ゲノムワイド関連解析)の略称。目的とする疾患などと関連する遺伝子を探索する遺伝統計解析手法の一つ。ゲノムには、塩基配列の違いに起因して、個人間で型が異なる部位が数百万から数千万か所存在するが、疾患を発症している群としていない群で、ゲノム上のある部位における特定の型の頻度を比較し、統計学的に有意な頻度の差が見られれば、疾患と関連する遺伝子がその近くに存在する可能性が高いと考えられる。

書誌情報

タイトル: Translational genomics of osteoarthritis in 1,962,069 individuals
著者名: Hatzikotoulas K et al.(当機構からの共著者:Akira Narita, Takamitsu Funayama, Chinatsu Gocho, Sachiyo Sugimoto, Fuji Nagami, Mika Sakurai-Yageta, Gen Tamiya, Masayuki Yamamoto)
掲載誌: Nature
掲載日: 2025年4月9日
DOI: 10.1038/s41586-025-08771-z