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- 2025.02.28
ゲノム・タンパク質・糖鎖を同じ土台に載せて解析 名古屋大学・岐阜大学糖鎖生命コア研究所が東北大学東北メディカル・メガバンク機構と覚書を締結【プレスリリース】
名古屋大学・岐阜大学が共同して設置する糖鎖生命コア研究所と東北大学東北メディカル・メガバンク機構の研究協力により、ヒューマングライコームプロジェクト及び東北メディカル・メガバンク計画の推進を図り、生命現象の理解とヒトの健康・医療の向上に貢献することを目的とした包括的な連携に関する覚書を本日締結しました。
覚書の内容
ヒューマングライコームプロジェクト(HGA)を代表して東海国立大学機構の名古屋大学・岐阜大学糖鎖生命コア研究所と東北大学東北メディカル・メガバンク機構(ToMMo)とが連携し、ToMMoが収集した生体試料の糖鎖解析をHGAの参画機関が行います。すなわち、ToMMoによって理論的かつ豊富に収集された生体試料について、HGAは新たに包括的かつ詳細な糖鎖データを獲得します。ToMMoとHGAは得られたデータを共同で解釈し、なおかつ解明された糖鎖情報と解析ツールを利用し、限定公開される糖鎖情報と保有する関連データとの統合解析やデータベース運用に関する連携や研究者の交流を行います。
覚書締結の背景
名古屋大学と岐阜大学を運営する東海国立大学機構は、自然科学研究機構及び創価大学とともに、2023年4月から生命科学領域において初の文部科学省「大規模学術フロンティア促進事業」として、HGAを始動させました。
すべての細胞は糖鎖の森で覆われており、糖鎖は、ゲノム・タンパク質と並び、生物の生命活動に欠かせない「第3の生命鎖」とされています。しかし、その構造の複雑さや取り扱いの難しさからから、系統だった解析が難しく、従来は研究者が個別に研究を進めてきましたが、ゲノム・タンパク質と比較して圧倒的に情報量が少ないのが現状です。HGAでは、上記3つの研究拠点が互いに連携し、日本の総力を挙げて 糖鎖情報を世界に先駆けて網羅的に読み解くことを目指します。そしてその情報を幅広く利用するシステム(糖鎖ナレッジベース TOHSA)を構築することで、従来の概念「セントラルドグマ」を越えてゲノム、タンパク質に、第3の生命鎖、糖鎖を加えた新たな生命観「拡張セントラルドグマ」の基礎を打ち立てます。
予定通り、この2年間で技術基盤を整えることができました。今後は糖鎖のデータ取得を本格的に実施し、生命機能の解明をさらに推し進め、その成果が医療をはじめとした様々な研究分野で応用されることを目標にしています。
ToMMoは、岩手医科大学いわて東北メディカル・メガバンク機構とともに、東北メディカル・メガバンク計画を推進しています。本計画は宮城県、岩手県で合計15万人の参加者に対して、各種生体試料の収集、詳細な検査、アンケート調査等を継続的に実施しており、さらに生体試料からゲノムやその他のオミックスデータを解析しています。これらの試料・情報をバイオバンクとして整備し、多くの研究者が利活用可能なセントラルドグマを横断した研究基盤を構築しています。
今後の展望
三大生命鎖であるゲノム・タンパク質・糖鎖を同じ土台に載せて解析することで、「拡張セントラルドグマ」の基礎確立に向けた新たな展開が期待できます。
HGAは、東北メディカル・メガバンク計画の生体試料の糖鎖情報を解読し、糖鎖ナレッジベース TOHSAを拡大し、生命科学者にとって三大生命鎖への理解の障壁であった糖鎖情報の利用を促進します。東北メディカル・メガバンク計画のゲノム・メタボロームなどのデータに、HGAにより「糖鎖」という新しいレイヤーを加えることで、生命の包括的な理解が進み、これまで以上に未来型予防・医療につながる研究成果の創出が期待できます。糖鎖を活用とした例として、インフルエンザの抗ウイルス薬のタミフルがあります。さらに各疾患マーカーとして診断にも利用されています。しかし、このような様々な医療への応用は未だに限定的であり、本連携により生命科学と医療のさらなる革新が期待できます。

覚書締結の様子