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2023.07.06

地域住民コホート調査における中心血圧、頸動脈内膜中膜複合体厚と高血圧発症に関する論文が掲載

地域住民コホート調査をもとにした中心血圧、頸動脈内膜中膜複合体厚と高血圧発症に関する論文がJournal of Atherosclerosis and Thrombosis誌に掲載されました。

高血圧は心血管疾患のリスク因子となるため、適切な管理が必要です。正常高値血圧や高値血圧は高血圧の基準(収縮期血圧140 mmHg以上または拡張期血圧 90 mmHg以上)を満たさないものの正常血圧でもない、高血圧の一歩手前の状態と言えます。正常高値血圧や高値血圧の状態の人は高血圧発症を予防するために、食事療法、運動療法などの生活習慣の改善や家庭での血圧測定などが勧められますが、予防行動は個人の努力に任されることが多く、十分に管理されないことが多々あります。高血圧発症のリスクを評価することで、リスクの高い人を抽出し、重点的に指導を行ったり、経過観察を行ったりすることができるので、リスク評価は高血圧予防に有用と考えられます。そこで、中心血圧と頸動脈内膜中膜複合体厚に注目し、高血圧発症の予測因子となるか検討を行いました。
中心血圧は手首に装着する機械で測定され、心臓から血液が送り出されるときにつくられる駆出波と、駆出波が血管壁に衝突してできる反射波を用いて、心臓から直接出る大動脈にかかる血圧を推定したものです。一般的に測定される上腕血圧と異なり、中心血圧は血管の性状や分岐の具合に影響を受けないため、より正確に脳、心臓、腎臓などの臓器にかかる圧を測定できるとされています。
頸動脈内膜中膜複合体厚は、超音波検査で頚部の動脈(頸動脈)の血管壁の中膜と内膜の合計の厚さを測定します。動脈硬化が進むと厚くなり、頸動脈内膜中膜複合体厚は心血管疾患や死亡と関連するとの報告が数多くあります。
本研究から正常高値血圧や高値血圧の人において、中心血圧が高いほど、または頸動脈内膜中膜複合体厚が厚いほど、高血圧を発症しやすいことが明らかになりました。中心血圧や頸動脈内膜中膜複合体厚の測定を追加で行うことで、従来よりも正確に高血圧発症のリスクが高い人を抽出することができ、予防に役立てることができる可能性が示唆されました。

【論文情報】
タイトル: Association of Central Blood Pressure and Carotid Intima Media Thickness with New-Onset Hypertension in People with High Normal Blood Pressure
著者:Sayuri Tokioka, Naoki Nakaya, Kumi Nakaya, Masato Takase, Mana Kogure, Rieko Hatanaka, Ippei Chiba, Ikumi Kanno, Kotaro Nochioka, Hirohito Metoki, Takahisa Murakami, Michihiro Satoh, Tomohiro Nakamura, Taku Obara, Yohei Hamanaka, Tomoko Kobayashi, Akira Uruno, Junichi Sugawara, Eiichi N Kodama, Soichi Ogishima, Yoko Izumi, Nobuo Fuse, Shinichi Kuriyama, Ichiro Tsuji and Atsushi Hozawa
掲載誌:Journal of Atherosclerosis and Thrombosis
早期公開:2023年7月5日
DOI:10.5551/jat.64151