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2023.06.06

母親の社会的孤立と児の発達特性に関する論文がSocial Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌に掲載

三世代コホート調査の調査票のデータを用いた、母親の社会的孤立と児の発達特性に関する論文がSocial Psychiatry and Psychiatric Epidemiology誌に掲載されました。

これまで、社会的ネットワーク・社会的サポート等の社会関係と児の発達特性の関連が示されてきましたが、児が出生後の社会関係を測定した研究が主です。妊娠期は生物学的・精神的・社会的な変化が大きいにも関わらず、母親における出産前後の社会関係との関連は不明です。そこで、三世代コホート調査の自記式調査票データを用いて、出産前後の母親の社会的孤立と児の発達特性の関連を検討しました。

Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6)を妊娠中期と産後1年時に母親に回答してもらい、社会的孤立を「妊娠中・産後ともになし」「妊娠中のみあり」「産後のみあり」「妊娠中・産後ともにあり」の4群に分類しました。日本語版 Ages and Stages Questionnaire 第 3版(ASQ-3)※※を用いて児が2歳時と3.5歳時の発達を評価してもらいました。その結果、妊娠中・産後ともに社会的に孤立している母親の割合は、13.1%でした。妊娠中・産後ともに社会的に孤立している母親の児は、2歳時・3.5歳時のいずれでも発達が遅れている割合が高いことがわかりました。妊娠中のみの社会的孤立、産後のみの社会的孤立は、2歳時・3.5歳時ともに児の発達特性との関連はみられませんでした。

母親の社会的孤立を早期にスクリーニングし介入につなげることが、児の発達に有益である可能性が本研究から示唆されました。

※Lubben Social Network Scale 短縮版 (LSNS-6):ネットワークサイズや接触頻度とともに情緒的・手段的サポートを評価する6項目(家族に関する3項目、友人関係に関する3項目)から成る尺度

※※Ages and Stages Questionnaire 第 3版(ASQ-3):米国で開発された乳幼児の発達評価ツール。親などの養育者が記入することで簡便に児の発達の状況を把握することができる。

書誌情報

タイトル:Maternal social isolation in the perinatal period and early childhood development: the Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study
著者名:Keiko Murakami, Aoi Noda, Mami Ishikuro, Taku Obara, Fumihiko Ueno, Tomomi Onuma, Saya Kikuchi, Natsuko Kobayashi, Hirotaka Hamada, Noriyuki Iwama, Hirohito Metoki, Masahiro Kikuya, Masatoshi Saito, Junichi Sugawara, Hiroaki Tomita, Nobuo Yaegashi, Shinichi Kuriyama
掲載誌:Social Psychiatry and Psychiatric Epidemiology
早期公開日:2023年6月3日
DOI:10.1007/s00127-023-02498-w